民泊セルフチェックインシステム「minpakuIN」を使えば合法なのか?


minpakuIN

民泊セルフチェックインシステム販売開始

民泊利用者自らが、チェックインからアウトまでを行える自動受付システム「minpakuIN」(漢字名:民泊イン)が発表されました。販売会社のプレスリリースによれば、「パスポート情報の保全を簡易化することで、民泊事業者の法令遵守(コンプライアンス対応)を促し、合法的民泊事業の推進に寄与したいと考えております。」とのことです。

同システムのメリットとして、

  1. 受付に設置された情報端末(タブレット型)で、民泊利用者自らがチェックインからアウトまでを行えるため、受付人員の費用を抑制できる
  2. 旅館・民泊事業者に義務付けられているパスポート情報の保管を、クラウド(データをインターネット上に保存する技術)上でできるため、同端末が紛失・故障しても情報を保全できる
  3. 受付時間が24時間、3カ国語(日本語、英語、中国語)に対応している

が挙げられています。

民泊セルフチェックインでも合法なのか?

「minpakuIN」(漢字名:民泊イン)は、その名の通り民泊で活用することが想定されているようですが、本システムを利用すると民泊が合法的に実施できるのでしょうか。商品説明サイトでは「コンプライアンス対応」と記載していることから、同製品は完全に関係法令に適合しているという前提で販売されているようです。

そこで、本記事では「特区民泊」と「簡易宿所型民泊」に分けて、同製品を使った民泊が法規制に適合しうるのかを考察してみます。

特区民泊の場合

「本人確認方法」と「本人確認手段」を検討

大田区の特区民泊を例に、特区民泊における本人確認の方法と手段をみてみます。

特区民泊では、滞在者の施設の「使用開始時」及び「使用終了時」にゲストの本人確認を実施する必要があります。本人確認は、対面又は映像等により確実に確認できる方法により行います。

【特区民泊】本人確認方法
  • 滞在者の施設の使用開始時及び使用終了時に
  • 対面又は映像等により確実に確認できる方法により、本人確認を行う。

また、本人確認の手段としては日本人の場合と外国人の場合で区別されています。日本人の場合には免許証等の顔写真付きの身分証明書を「確認」すれば足ります。一方で、外国人の場合には旅券の写しを滞在名簿と共に保管する必要があります。

【特区民泊】本人確認手段

日本人の場合:顔写真付きの身分証明書等

外国人の場合:旅券(写しを滞在名簿と共に保管)
※旅券の呈示を拒否する場合、区の指導であることを説明してもなお拒否する場合は最寄りの警察署等に連絡するなど適切な対応を行う。

特区民泊の要件を満たさない

「minpakuIN」(漢字名:民泊イン)のセルフチェックインの合法性を上記に照らし合わせて検討してみましょう。minpakuIN公式サイトの説明によると、利用方法は以下のとおりです。

宿泊者は、受付システムの操作手順に従い、宿泊情報の確認、約款へのサイン、パスポートリーダー機器にてパスポート情報の入力(外国籍の方のみ)を完了させます。登録が完了すると、鍵の受け渡し指示が画面に表示され、チェックインが完了します。

上記の説明によれば、身分証明書の確認や外国人のパスポート写し取得など特区民泊で必要とされる「本人確認手段」は満たしています。しかしながら、「セルフチェックイン」の名の通りゲストが自身で機械を操作してチェックインするので「対面又は映像等により確実に確認できる方法」という「本人確認方法」については満たされていません

したがって、上記の説明を前提とすると、同製品を使って特区民泊を開業することは不可能です。特区民泊の特定認定申請ではガイドラインに適合した本人確認方法を説明する必要があります。「minpakuIN」を用いたスキームでは対面に準じる本人確認方法とは認められず、認定は取得できないと思われます。

簡易宿所型民泊の場合

国家戦略特区以外の地域で民泊事業を実施する場合には、旅館業法における簡易宿所の営業許可を取得します。では、「minpakuIN」は簡易宿所の構造設備基準を満たすことが出来るのでしょうか。

平成28年4月から玄関帳場についての規定が緩和

本サイトでも取り上げている通り、「旅館業における衛生等管理要領」が改正され、宿泊者数10人未満として申請された簡易宿所であって一定の要件を満たしたものは玄関帳場が不要となりました。

宿泊者の数を10人未満として申請がなされた施設であって、次の各号のいずれにも該当するときは、これらの設備(=玄関帳場)を設けることは要しないこと。

  1. 玄関帳場等に代替する機能を有する設備を設けることその他善良の風俗の保持を図るための措置が講じられていること。
  2. 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応のための体制が整備されていること。

民泊のような小規模な簡易宿所については、玄関帳場の代替措置を設置すれば玄関帳場設備が不要になりました。そこで、「minpakuIN」を設置することで玄関帳場の設置が不要になるのか検討します。

玄関帳場等の代替とは?

「旅館業における衛生等管理要領」に規定されている「玄関帳場等に代替する機能を有する設備」の意義が問題となります。どのような条件を満たせば「代替する機能」と認められるのでしょうか。

特区民泊の本人確認方法では「映像等」による方法でも認められましたが、旅館業法においては「対面性」が担保されているかどうかが「代替する機能」のカギになります。すなわち、ゲストとの対面性が担保されていれば、玄関帳場の代替性が認められるケースが多いといえます。

これを「minpakuIN」に当てはめてみましょう。「minpakuIN」は「セルフチェックイン」を行う機械であるため、ゲストは自分一人でチェックイン作業を行います。ゲストが一人で機会に向かってチェックインするので、「対面性」は満たせません。

したがって、本製品は玄関帳場代替性のカギとなる「対面性」を担保できないため、本製品単体でチェックインを行う場合には玄関帳場の代替措置としては認められず、簡易宿所に玄関帳場が不要とはなりません。

対面性を満たさないので玄関帳場の代替として認められない

もちろん、スタッフによる対面チェックインと合わせて、パスポートの写しを取得する作業だけを別途「minpakuIN」にて実施するのであれば差し支えありません。しかし、「minpakuIN」単体でチェックインを完結させるのは不可となります。

特定行政書士 戸川大冊
small早稲田大学政治経済学部卒/立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)
民泊許可手続の第一人者。日本全国の民泊セミナーで登壇し累計850人以上が受講。TVタックルで民泊について解説。政治法務の専門家行政書士として日本全国の政治家にクライアントが多数。 民泊を推進する日本全国の自治体政治家や国会議員にネットワークを持つ、日本で唯一の行政書士。
ビートたけしのTVタックル、NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に取り上げられている。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、東京新聞、週刊誌などでも掲載多数。

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