【旅館業】「内法」とは?旅館業法では「有効面積」が廃止されたので注意が必要!


客室面積についての許可基準

旅館業法に基づく許可を取得するためには、法令に定められた基準を満たす必要があります。各客室の定員を計画する上で考慮しなければならない旅館業法に関する基準項目のうち、客室の面積について解説します。

特区民泊の面積については以下のページをご確認ください。
【特区民泊】「壁芯」とは?旅館業と異なる客室床面積の測り方に注意!

客室面積の考え方

客室の面積に関する基準には、構造部分の合計床面積についての基準と、客室の有効面積についての基準があります。

構造部分の合計床面積とは、寝室、浴室、便所、洗面所その他の宿泊者が通常立ち入る部分の床面積を合計した面積を指します。

客室の有効面積については、寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分の床面積の合計を指します。

合計床面積:寝室、浴室、便所、洗面所その他の宿泊者が通常立ち入る部分の床面積の合計

有効面積:寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分の床面積の合計

この点、旅館業に関する法令では「有効面積」の概念は廃止されましたが、各自治体の条例では「有効面積」の概念を条例等で定めた上で引き続き基準としている場合が多数あります。例として新宿区旅館業法施行条例施行規則を見てみましょう。

新宿区旅館業法施行条例施行規則

第11条(1客室の有効面積)
条例第5条第1項第5号アの規定による1客室の有効部分の面積(以下「有効面積」という。)は、寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分の床面積を合計することにより算定するものとする。

したがって、旅館業に関する法令レベルでは「有効面積」の概念は廃止されましたが、上乗せ条例が制定されている自治体では引き続き「有効面積」の概念に関する理解が必須となります。なお、民泊代行業者などのサイトでは間違った知識に基づいて解説してあるケースがほとんどなので、そのようなサイトを鵜呑みにしないように注意してください。

ちなみに、新宿区では有効面積3㎡あたり1人しか客室定員を認めませんが、旅館業法令上はこのような「一人あたりの有効面積規制」もありません。新宿区では、条例によって一人あたり有効面積規制を上乗せしています。

新宿区旅館業法施行条例

第5条(宿泊者の衛生に必要な措置の基準等)
法第4条第2項の規定により定める措置の基準は、次に掲げるとおりとする。

(1)~(4) 略

(5) 客室には、次に掲げる営業の区分に応じ、それぞれに定める人数を超えて宿泊者を宿泊させないこと。
ア 旅館・ホテル営業及び下宿営業 規則で定めるところにより算定した1客室の有効部分の面積(以下「有効面積」という。)3平方メートルにつき1人
イ 簡易宿所営業 有効面積1.5平方メートルにつき1人

内のり(内法)とは?

内法とは、柱や建具など厚みのあるものの内側を測る寸法です。対面する2つの部材の内側から内側までの距離を指します。旅館業法上の面積を算出する場合には、壁の内側と内側を測る内法計算で考えます。

構造部分の合計床面積

東京都手引より

合計床面積とは、寝室、浴室、便所、洗面所その他の宿泊者が通常立ち入る部分の床面積を合計した面積を指します。したがって、床の間など宿泊者が通常は立ち入らない部分は算定から除外します。

旅館業法における面積の算定に当たっては、建築で使用する壁芯のものとは異なり、内のりで算定します。建築図面の床面積とは算出方法が異なるので注意が必要です。構造部分の床面積は、建築図面の床面積よりも少なくなってしまいます。

右図の例では、塗りつぶしの部分(A+B)が構造部分の床面積の算定範囲になり、通常は立入らないクローゼット等の収納部分は合計床面積の算定からは除外されます。

具体的な算定範囲については各自治体の規則等で定められていますが、その内容はほぼ同一です。例えば東京都の場合には「東京都旅館業法施行細則」で規定しています。

東京都旅館業法施行細則

第九条(構造部分の合計床面積)
条例第七条第二号イに規定する一客室の規則で定める構造部分の合計床面積は、寝室、浴室、便所、洗面所その他の宿泊者が通常立ち入る部分の床面積を合計した面積とする。

客室の有効面積

中野区資料より

中野区旧資料より

客室の有効部分の面積は、寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分の床面積を合計して算定します。
したがって、面積の算定に当たっては建築で使用する壁芯のものとは異なり、内のりで算定します。建築図面の床面積とは算出方法が異なるので注意が必要です。構造部分の床面積は、建築図面の床面積よりも少なくなってしまいます。

また、寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分の合計ですので、有効面積を算定する際には浴室の面積は含みません。

右図の例では、寝室その他の宿泊者の睡眠、休憩等の用に供する部分は、斜線の範囲になります。通常は人が立入らないクローゼット等の壁に造り付けの家具部分も除きます。この図は、法令改正前の中野区旅館業手引に記載されていた図です(現在の中野区では有効面積の概念を利用しません)。

また、さきほど条例等を挙げた新宿区では、「用に供する」を厳格に解釈して指導することがあります。詳細は専門家にお問い合わせください。

窓の面積

以前の旅館業法令では、有効面積に基づき客室の採光や換気用の窓の面積(有効面積の10分の1以上)も規定されていたため、既存建物については注意が必要でした。しかし、この点についても旅館業法令では数値規制が廃止されました。

しかし、「有効面積」の概念を引き続き利用しているのと同様に、自治体によっては上乗せ条例により窓面積の数値規制を残している場合が多数あります。有効面積の例と同様に新宿区の条例を見てみましょう。

新宿区旅館業法施行条例

第8条(旅館・ホテル営業の施設の構造設備の基準)
政令第1条第1項第8号の規定により定める構造設備の基準は、次に掲げるとおりとする。

(1)~(2) 略

(3) 客室は、次に掲げる基準を満たすこと。
ア 壁その他これに類する物により、他の客室及び廊下等から区画されること。
イ 1客室の規則で定める構造部分の合計床面積は、政令第1条第1項第1号に規定する面積以上であること。
ウ 睡眠、休憩等の用に供する部屋は、採光が十分に得られる規則で定める面積以上の広さの窓を有すること。

新宿区旅館業法施行条例施行規則

第16条(採光窓の面積)
条例第8条第3号ウ(第10条第2項及び第11条第2項において準用する場合を含む。)の規定により定める面積は、有効面積の10分の1とする。

以上のように、旅館業に関する面積の概念は自治体により大きく異なります。したがって、インターネット上の情報を鵜呑みにして申請者本人が保健所へ事前相談に行っても、担当官とは全く話が噛み合わないケースが頻発しています。当職が各地の保健所窓口で申請手続きをしているときにも、隣の窓口で担当官と申請者本人が話しをしていることがありますが、両者の全く話が噛み合わず申請者が支離滅裂な主張を展開している場面を見ることが多くあります。

この点、建築士であっても旅館業法令を正しく理解しているケースはほぼ皆無なのでご注意ください。建築士が旅館業営業許可申請の書面作成をするのは行政書士法違反であり、そのような申請は違法です。

特定行政書士 戸川大冊
small早稲田大学政治経済学部卒/立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)
民泊許可手続の第一人者。日本全国の民泊セミナーで登壇し累計850人以上が受講。TVタックルで民泊について解説。政治法務の専門家行政書士として日本全国の政治家にクライアントが多数。 民泊を推進する日本全国の自治体政治家や国会議員にネットワークを持つ、日本で唯一の行政書士。
ビートたけしのTVタックル、NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に取り上げられている。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、東京新聞、週刊誌などでも掲載多数。

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