インターネットカフェは「旅館業許可」を取得する必要はないのか?について行政書士が詳しく解説します

インターネットカフェ

セミナーの質疑応答で質問をいただきました

「民泊許可セミナー」の質疑応答で、「インターネットカフェは旅館業に該当しないのか?」という質問をいただきました。

結論を申し上げると、インターネットカフェは旅館業に該当しないように工夫しているので、旅館業の営業許可は取得していません。いただいた質問は、民泊事業を考える上で重要といえる「鋭い」ものなので、当サイトでも御紹介します。

インターネットカフェは旅館業に該当しないように工夫しているので、旅館業の営業許可は取得不要

そもそも「旅館業」のが必要な場合とは?

「旅館業」の定義とは?

「旅館業」とは、宿泊料又は室料を受け、人を宿泊させる営業のことをいい、「宿泊」とは、寝具を使用して旅館業の施設を利用することをいいます。

旅館業は、その営業形態によって「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」「下宿営業」に分かれます。民泊を実施する場合には、「旅館・ホテル営業」か「簡易宿所営業」の許可を取得するケースがほとんどです。

旅館業の許可については、こちらの記事をご確認ください。

「旅館業」に該当するかの判断基準

厚生労働省の資料によれば、旅館業法の適用にあたっては、次の4項目を踏まえ判断することとなっています。

  • 宿泊料徴収の有無【「宿泊料」要件】
  • 社会性の有無【「営業」要件】
  • 継続反復性の有無【「営業」要件】
  • 生活の本拠か否か【「宿泊」要件】

インターネットカフェとは?

インターネットカフェの基本的営業形態

インターネットカフェは、パソコンやインターネット環境を時間単位で提供する施設として運営されています。利用者は座席でデスクトップPCによるウェブブラウジング、ゲーム、動画視聴、文書作成等を行い、多くの店舗では飲食物の提供も併設しています。

料金体系の特徴

  • 時間制料金(15分、30分、1時間単位等)
  • パック料金(3時間パック、6時間パック、ナイトパック等)
  • 会員制度による割引システム
  • 延長料金の自動加算システム

施設・設備の構成

  • オープンブース(仕切りのある開放型座席)
  • 個室ブース(完全個室タイプ)
  • リクライニングシート
  • フラットシート(仮眠可能な平坦座席)
  • シャワー室(一部店舗)
  • 漫画・雑誌コーナー
  • ドリンクバー・軽食販売

利用者の実際の行動パターン

1. 終電逃し利用者

終電を逃した利用者は、通常22時から24時頃にかけて来店し、翌朝の始発電車まで約6~8時間滞在します。これらの利用者は入店直後からナイトパックを選択し、フラットシートや個室ブースを確保します。店内では最初の1~2時間程度はインターネット利用や読書を行いますが、その後は提供されるブランケットを使用して横になり、睡眠を取ります。

朝方5時頃から身支度を整え始め、店舗によってはシャワー施設を利用して洗面を済ませ、始発電車の時間に合わせて退店するという一連の行動が定型化しています。利用時間中、インターネット利用は入店直後の短時間にとどまり、大部分の時間は横になって休息している状況が観察されます。

2. 出張者による利用

出張で訪れたビジネスマンの中には、個室タイプの座席を事前予約し、スーツケースや出張用荷物を持参して来店する者が見られます。これらの利用者は夕方から夜間にかけて入店し、翌朝まで約10~12時間滞在します。

滞在中の行動は、チェックイン後の業務関連のメール確認や資料作成を1~2時間程度行った後、提供される寝具類を使用して横になり、朝まで睡眠を取ります。翌朝はシャワー施設で身支度を整え、朝食として店内の軽食を購入し、通常のビジネスホテルと同様の時間帯(午前7~9時)に退店します。インターネット環境の利用は業務上必要な短時間に限定されています。

3. 連続長期滞在利用

一部の利用者は、数週間から数ヶ月にわたって同一店舗を継続利用しています。これらの利用者は日中は外出し、夕方から翌朝まで店舗に滞在するという生活サイクルを確立しています。

店内では個人の所有物(衣類、洗面用具、書類等)を座席周辺に保管し、シャワー施設で入浴、店内販売の食品で食事を済ませています。睡眠は提供される寝具を使用してフラットシートで取り、起床後は洗面・着替えを行います。郵便物の受取先として店舗住所を使用したり、各種手続きの際に店舗を拠点として申告する事例も確認されています。

4. 定期的反復利用者

特定の曜日や月末などに定期的に同じ店舗を利用する利用者が存在します。これらの利用者は特定の座席や個室を好み、スタッフとも顔見知りになっています。

持参する荷物は着替え、洗面用具、常備薬などの生活必需品が含まれており、利用時間は12時間以上となることが常態化しています。滞在中の行動は他の長時間利用者と同様で、短時間のインターネット利用の後、大部分の時間を横になって休息に充てています。料金は長時間パック料金を継続的に支払っています。

5. 緊急時における一時利用者

家庭内の事情、自然災害、交通機関の長時間停止などにより、突発的に来店し数日間連続で利用する者が見られます。これらの利用者は複数日分の着替えや生活必需品を持参しています。

滞在中は連絡先への電話連絡やインターネットでの情報収集を行いつつ、夜間は横になって睡眠を取ります。日中は外出することもありますが、荷物は店内に残したまま席を確保し続けます。食事は主に店内販売の食品を利用し、シャワー施設で入浴・洗面を行っています。利用期間は状況が解決するまでの2~7日程度が一般的です。

6. 時間帯別の利用行動の変化

22時以降の利用者の多くは、入店後1時間程度でインターネット利用を終了し、その後は横になって休息する行動が観察されます。0時から6時の間は、大部分の利用者が座席で横になった状態を維持しており、実際のパソコン使用率は極めて低くなります。朝6時頃から徐々に起き上がり、洗面や身支度を始める利用者が増加し、7時から9時にかけて退店のピークを迎えます。

そこで、このような「インターネットカフェの終夜営業」は旅館業に該当しないかが問題となります。

「宿泊」の対価かどうかは実質的に判断する

旅館業法が適用されるかどうかの判断基準のうち、「1.宿泊料徴収の有無」にかんして、「宿泊料」とは「宿泊の対価」をいいます。

したがって、インターネットカフェで「宿泊の対価」である「宿泊料」を徴収していれば、当該インターネットカフェは旅館業法が適用されます。なお、この「宿泊料」とは名称にかかわらず「宿泊の対価」であれば全て含まれます。実質的に、「宿泊」させたことの対価かどうかが問われます。

では、「宿泊」とは何を指すでしょうか。これは、上記で説明した「旅館業」の定義に出てきます。「宿泊」とは、「寝具を使用して旅館業の施設を利用すること」をいいます。ポイントとなるのは「寝具を使用して」の部分です。

インターネットカフェの利用料は「宿泊」の対価?

「寝具」の提供はNG

インターネットカフェが「旅館業」に該当しないで営業するためには、旅館業法第2条第1項に規定する「寝具を使用」させてはいけません。具体的には、ベッドはもちろんのこと布団や毛布も提供してはいけないと考えられます。すなわち、インターネットカフェにある「ベッド」のようなものはベッドではなく、「布団」や「毛布」のようなものは布団でも毛布でもないという法的構成が必要です。

「シート」で「ひざ掛け」を使用

インターネットカフェでは、シートのタイプが選択可能となっており、「ビジネスチェア」「リクライニングシート」「フルフラットシート」が用意されています。これらはあくまで座席の種類であり、フルフラットシートについても「椅子が平坦になる機能を有する座席」として位置づけられます。

また、飛行機の長距離便と同様に、肌寒いと感じる利用者向けに「ひざ掛け」「ブランケット」が用意されていますが、これらは冷房対策用の補助的な防寒具であり、就寝用の寝具ではありません。

インターネットカフェは「旅館業」営業ではない

終電を逃した利用者や出張者が長時間滞在し、横になって休息を取る行為は、法的には「ひざ掛け」を使用して「座席」で「居眠り」をしているものと評価されます。たとえ6~12時間の連続利用であっても、座席での休息は旅館業法上の「寝具の使用」には該当しません。

個室ブースでの長時間利用についても、これは「インターネット利用のためのプライベート空間の提供」であり、宿泊を目的とした「施設の独占的使用」とは性質が異なります。

数日から数週間の連続利用についても、各利用は個別の「インターネット利用サービス」の継続であり、宿泊サービスの連続提供ではありません。

つまり、法的に考えると、インターネットカフェでは利用者が「ひざ掛け」を使って「イス」で「居眠り」しているといえます。

以上より、インターネットカフェは(名称を問わず実質的にも)宿泊料を徴収していないため、旅館業法は適用されないと考えられます。

インターネットカフェでは利用者が「ひざ掛け」を使って「イス」で「居眠り」している
=インターネットカフェは(名称を問わず実質的にも)宿泊料を徴収していない
=旅館業法は適用されない

なお、東京都ではインターネットカフェを対象とした条例が施行されています。詳しくは「インターネット端末利用営業の規制に関する条例」をご確認ください

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この記事を書いた人

特定行政書士  戸川大冊

特定行政書士  戸川大冊

旅館業許可・住宅宿泊事業・特区民泊などの宿泊施設許認可および政治法務が専門で、「民泊許可」の第一人者。様々な観光系企業の顧問や大学での講義を担当している。
テレビ朝日「羽鳥慎一モーニンショー」、フジテレビ「めざまし8」、NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に出演。