旅館業とは?
民泊についての報道が増えるにつれて、旅館業法の適用に関する問い合わせが増えています。各種の報道により、民泊を合法的に実施するためには旅館業法の要件をクリアする必要があるという点について、世間で認知され始めているようです。
「このような民泊のケースでも旅館業に該当するので許可申請が必要なのか、それとも旅館業法の適用範囲外だから民泊許可は不要なのか」といった問い合わせを多くいただいております。今回の記事では、民泊が旅館業法が適用されるか否かを判定する「4項目」について具体的に説明してまいります。
旅館業の定義は3つの要件がある
最初に、「旅館業」の定義を見てみます。
→旅館業法第2条各項参照
この定義を分解すると、以下の3要素に分解可能です。
- 「宿泊料」を受けて
- 人を「宿泊」させる
- 「営業」
「宿泊」「宿泊料」「営業」
上記の定義にある、「宿泊」と「宿泊料」「営業」については以下の通りです。
→生活の本拠を置くような場合には「宿泊」には当たらない。
→宿泊料は名目のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれる。例えば、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされる。
→「社会性をもって」とは、社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為として行われるもの。
今回の基準を具体的なケースに当てはめた記事として、「インターネットカフェは旅館業ではないか?」もアップしています。こちらも是非ご覧ください。
民泊が旅館業にあたるかを判断する4要素
上に挙げた「3要件」を満たしているかを判断するために、具体的な要素に分けて考えます。厚生労働省の資料によれば、旅館業法の適用にあたっては、次の4要素を踏まえ判断することとなっています。「宿泊料」「営業」「宿泊」のうち、「営業」の要件を「社会性の有無」と「反復継続性の有無」に分けて別々に検討するため、全部で4つの要素となっています。
実際の案件では、下記の要素を個別に当てはめて判断します。
以下に、上記の4項目をそれぞれ具体的に検討してみます。
宿泊料徴収の有無
【宿泊料の定義】
- 名称にかかわらず、休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費など
- 時間単位で利用させる場合を含む
【宿泊料に該当せず】
- 食事代
- テレビ等の視聴料
- 体験事業の体験料 など
ここでポイントとなるのは、「宿泊料」か否かは宿泊の対価であるか否かを【実質的に】判断するという点です。例えば、名称が「休憩料」や「室内清掃費」だとしても、宿泊の対価であれば「宿泊料」と評価されます。すなわち、単に名称を「宿泊料」以外にすれば良いという訳ではありません。
そこで、「宿泊の対価」の「宿泊」とは何かが問題となります。この点、「宿泊」とは、寝具を使用して施設を利用することをいいます。
ただし、食費やテレビ・パソコン使用料など必ずしも宿泊に付随しないサービスの対価は宿泊料には含まれません。
社会性の有無
【社会性があると判断される例】
- 不特定の者を宿泊させる場合
- 広告等により広く一般に募集を行っている場合 など
【社会性がないと判断される例】
- 日頃から交流のある 親戚、知人、友人を泊める場合 など
「社会性」がある場合とは、社会通念上、個人生活上の行為として行われる範囲を超える行為として行われる場合であり、一般的には、知人・友人を宿泊させる場合は、「社会性をもって」には当たらず、旅館業にはあたりません。
一方で、インターネットサイト等を利用して、不特定多数の方を対象とした宿泊者の募集を行い、繰り返し人を宿泊させる場合は、「社会性をもって継続反復されているもの」に当たります。
継続反復性の有無
【継続反復性があると判断される例】
- 宿泊募集を継続的に行っている場合
- 曜日限定、季節営業など、営業日を限定した場合であっても繰り返し行っている場合 など
【継続反復性がないと判断される例】
- 年1回(2~3日程度)のイベント開催時であって、宿泊施設の不足が見込まれることにより、開催地の自治体の要請等により自宅を提供するような公共性の高いもの など
日数や曜日をあらかじめ限定した場合であっても、宿泊料を受けて人を宿泊させる行為が反復継続して行われる場合は、旅館業にあたります。
生活の本拠か否か
【生活の本拠でないと考えられる例】
- 使用期間が一ヶ月未満(ウイークリーマンション等)
- 使用期間が一ヶ月以上であっても、部屋の清掃や寝具類の提供等を施設提供者が行う場合(下宿など) など
【生活の本拠と考えられる例】
- 使用期間が一ヶ月以上(マンション、アパート、マンスリーマンション、サービスアパートメント等)で、使用者自らの責任で部屋の清掃等を行う場合 など
旅館業の本質は「人を宿泊させる」ことです。したがって、生活の本拠を置くような場合(例えばアパートやサービスアパートメント等)は貸室業・賃貸業であって旅館業には含まれません。
なお、国家戦略特区における「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」は旅館業法の規定の適用除外となり、「賃貸借契約」になります。