渋谷区内で民泊営業は可能か?ラブホテル建築規制条例の対象と規制内容を特定行政書士が解説します

渋谷区ラブホテル建築規制条例について

渋谷区で旅館業営業許可を取得して民泊を始めたいとお考えの皆様へ。渋谷区には「ラブホテル建築規制条例」という特別な規制があり、これを理解していないと、せっかく物件を確保しても営業許可が取れない可能性があります。

ただし、重要なポイントがあります。
200㎡未満の既存建物を用途変更して旅館業を営む場合、ラブホテル規制条例の対象外となります。

つまり、適切な物件選定と手続きを行えば、渋谷区でも他の地域と同様に民泊事業を始めることが可能です。

この記事では、渋谷区の「ラブホテル規制条例」について、どのような場合に適用されるのか、どうすれば適用を回避できるのかを、実務の観点から詳しく解説いたします。

民泊営業の基本知識

民泊の法令上の位置づけ

民泊を合法的に運営するには、主に以下の3つの方法があります。

  1. 旅館業法に基づく許可(旅館・ホテル営業または簡易宿所営業)
  2. 住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく届出
  3. 国家戦略特区における特区民泊

渋谷区で一般的な民泊を営業する場合、多くは旅館業法の「旅館・ホテル営業」の許可を取得することになります。この許可を取得するためには、保健所の営業許可だけでなく、建築確認や消防法令への適合など様々な手続きが必要です。

そして渋谷区においては、これらに加えて「ラブホテル建築規制条例」による建築同意が必須となります。

ラブホテル建築規制条例の適用対象と適用対象外

条例の適用対象となる建築とは

渋谷区のラブホテル規制条例には、建築基準法上の「建築」に該当する場合のみ適用されるという重要な限定があります。

条例で定義される「建築」とは、次のとおりです。

  1. 新築
  2. 大規模の修繕
  3. 大規模の模様替
  4. 建築基準法第87条第1項に規定する用途の変更

このうち、4の「用途の変更」で建築確認申請が必要となるのは、特殊建築物(旅館業はこれに該当)で床面積が200㎡を超える場合です。

整理すると、次のようになります。

200㎡未満の既存建物を旅館業施設に用途変更する場合
  • 建築確認申請が不要
  • ラブホテル規制条例の対象外
  • 有人フロント不要、ロビー・食堂の面積要件なし
  • 近隣説明会不要、審議会の審査なし
  • 通常の旅館業法の許可手続きのみで営業可能
200㎡以上の既存建物を旅館業施設に用途変更する場合
  • 建築確認申請が必要
  • ラブホテル規制条例の対象
  • 厳格な施設基準、近隣説明会、審議会の審査が必要
新築で旅館業施設を建てる場合
  • 規模に関わらず建築確認申請が必要
  • ラブホテル規制条例の対象

ラブホテル建築規制条例とは?

条例制定の背景と目的

渋谷区は平成18年(2006年)6月に「渋谷区ラブホテル建築規制条例」を制定しました。この条例は、以下の目的で定められています。

  • 安全・安心のまちづくりの推進
  • 良好な生活環境の保全
  • 教育環境の向上

条例は新規のラブホテル建築を抑制する厳しい規制となっており、実質的に渋谷区内での新規ラブホテル建築を不可能にしています。

なぜ民泊がラブホテル規制の対象に?

「民泊とラブホテルは全く違うのに、なぜ規制されるの?」と疑問に思われる方も多いでしょう。

その理由は、条例の対象が「ラブホテル」だけでなく、「旅館業法に基づくホテル等」全般に及ぶためです。つまり、条例は「これはラブホテルではありません」という証明(建築同意)を求めており、その証明なしには旅館業の営業許可申請すらできない仕組みになっています。

条例の適用対象となる施設

渋谷区で以下のいずれかに該当する施設を建築・運営する場合、条例により建築同意が必要です。

1. 旅館・ホテル営業

旅館業法第2条第2項に規定する施設で、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業(簡易宿所営業・下宿営業以外)

2. 簡易宿所営業

旅館業法第2条第3項に規定する施設で、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設

例外:カプセルホテル
シングルカプセル形態の簡易宿所(いわゆるカプセルホテル)で一定の要件を満たすものは、条例の適用対象外となります。

  • 「建築」には新築だけでなく、大規模修繕、大規模模様替、200㎡以上の用途変更が含まれます
  • 200㎡未満の既存建物を旅館業に用途変更する場合は、条例の対象外です
  • 新築の場合は、規模に関わらず条例の対象となります

建築同意を得るための2つの大きな壁

以下の説明は、200㎡以上の既存建物を用途変更する場合、または新築する場合に該当します。200㎡未満の既存建物を活用する場合は、これらの要件は適用されません。

第1の壁:建築できない地域・地区

以下の地域・地区では、原則としてホテル等の建築同意が得られません。

用途地域による制限

  • 第一種低層住居専用地域
  • 第二種低層住居専用地域
  • 第一種中高層住居専用地域
  • 第二種中高層住居専用地域

特別用途地区による制限

  • 第一種文教地区
  • 第二種文教地区

渋谷区の大部分は住居系の用途地域となっており、この時点で営業可能なエリアは限定されます。事業計画を立てる前に、必ず物件所在地の用途地域を確認してください。

第2の壁:厳格な施設基準

建築可能な地域であっても、「ラブホテルではない」ことを証明するため、次の9つの厳しい基準をすべて満たす必要があります。

1. 玄関の要件

  • 玄関や近接場所に、出入りする者を外部から見えにくくする設備(目隠しなど)がないこと
  • 営業中は自由に出入りできること
  • 玄関からフロントとロビーを見通せること

一般的な住宅を民泊に転用する場合、玄関周りが住宅仕様になっていることが多く、見通しが悪い構造になっていることがあります。改修が必要になる可能性があります。

2. フロント等の設置

  • 玄関から客室に至る経路で、必ず通過する場所にフロントを設置
  • 客と従業員が対面で受付業務を行える広さと設備
  • 客と従業員の間を遮るカーテンなどの設備は禁止
  • 自動チェックイン機は設置禁止

近年の民泊では、無人チェックイン(スマートロックやキーボックス)が主流ですが、渋谷区ではこれが完全に認められません。常に従業員が待機するフロントが必須となるため、人件費が大きく増加します。

3. ロビー等の設置(旅館・ホテル営業の場合のみ必須)

  • 客が自由に利用できるロビー
  • 収容人員に応じた面積基準あり

簡易宿所営業の場合は、ロビー等の設置は不要です。

面積基準
  • 収容30人以下:30㎡以上
  • 収容31〜50人:40㎡以上
  • 収容51人以上:50㎡以上
必要な施設

ロビー、フロント、待合室、談話室、客用トイレ

旅館・ホテル営業を選択する場合、一般住宅やマンションの一室ではこの広さのロビーを確保するのは非常に困難です。簡易宿所営業を選択すれば、この要件は適用されません。

4. 食堂等の設置(旅館・ホテル営業の場合のみ必須)

  • 宿泊客に食事を提供する用途
  • 収容人員に応じた面積基準あり(ロビーと同じ基準)
  • 食堂利用者が客室階に出入りする場合は、必ずフロントを通過する構造

簡易宿所営業の場合は、食堂等の設置は不要です。

面積基準(旅館・ホテル営業の場合)
  • 収容30人以下:30㎡以上
  • 収容31〜50人:40㎡以上
  • 収容51人以上:50㎡以上
必要な施設

食堂、レストラン、喫茶室、厨房、配膳室、客用トイレ

多くの民泊では食事提供を行わないため、旅館・ホテル営業を選択すると、この基準をクリアするために専用の食堂スペースを設けることが大きな負担となります。簡易宿所営業を選択すれば、この要件は適用されません。

5. 廊下・階段・昇降機等の要件

  • 宿泊・休憩のために客室を利用する者が通常使用する構造であること

一般的な構造であれば問題ありませんが、特殊な動線は認められません。

6. 客室の要件

  • 性的感情を刺激しない清楚な内装、照明、装置、寝台、寝具、装飾等
  • 外部に面する窓ガラスは透明ガラス(自然光を遮蔽するフィルム禁止)

過度な装飾や、プライバシー確保のための遮光フィルムが制限される可能性があります。ただし、やむを得ない場合は区長が要件を緩和できる規定があります。

7. 外観・屋外広告物の要件

  • 青少年の健全育成と住民の生活環境を損なわない外観
  • 良好な景観への配慮
  • 形態、意匠、色彩に配慮

派手な看板や建物の外観は避ける必要があります。

8. 休憩利用の表示禁止

  • 外周や外部から見える内部に、休憩料金や休憩利用可能な表示をしないこと

通常の民泊では休憩利用は想定していないため、問題になることは少ないでしょう。

9. 駐車場からの動線

  • 駐車場から直接、または近接した位置・フロントを経由しない廊下等から客室に出入りできる構造としないこと

駐車場を設置する場合、必ずフロントを経由する動線にする必要があります。

建築同意取得の手続きフロー

ラブホテル規制条例の対象となる場合(200㎡以上または新築)の手続きです。200㎡未満の既存建物を活用する場合、これらの手続きは不要です。

渋谷区でホテル等の建築同意を得るには、以下の手順を踏む必要があります。

1. 事前相談

住宅政策課と生活衛生課の両方に相談が必要です。窓口相談は予約制となっています。

2. 標識の設置

「ホテル等建築計画概要」の標識を敷地内に設置します。申請書提出の10日前までに設置し、同意通知書交付まで掲示し続けます。

3. 説明会の開催

  • 計画敷地から周囲200mの範囲内の住民等に対して説明会を開催
  • 開催前に余裕をもって文書配布等で周知
  • 説明会の結果によっては再度開催が必要

これは民泊事業者にとって大きなハードルです。近隣住民の理解を得られない場合、事業計画自体が頓挫する可能性があります。

4. 建築同意申請書の提出

必要な図書を添付して申請します(12部必要)。

添付図書

  • 付近見取図
  • 建築物用途別周囲現況図(200m範囲内)
  • 配置図、各階平面図、立面図、断面図
  • 完成予想図
  • 客室内仕上げ表、外部仕上げ表
  • 現況写真
  • 説明会開催報告書 など

5. 審議会での審議

「渋谷区ホテル等建築審議会」で審議されます。法律や建築の学識経験者等で構成される審議会の意見を経て、区長が同意の可否を判断します。

6. 建築同意通知書の交付

審議会後、1週間〜10日程度で交付されます。

7. その後の手続き

同意通知書を受領して初めて、以下の手続きが可能になります。

  • 旅館業法による営業許可申請
  • 建築基準法による確認申請
  • 中高層建築物紛争予防条例による標識設置
  • 都市計画法による開発許可申請 など

渋谷区内で民泊(旅館業)を開業する場合のハードル

ラブホテル規制条例の対象となる場合(200㎡以上または新築)に該当します。200㎡未満の既存建物を活用すれば、これらの課題は回避できます。

コスト面での課題

  1. 人件費の増加
    • 有人フロントの設置義務により、24時間体制での人員配置が必要
    • 無人運営による省人化が不可能
  2. 施設整備費の増加(旅館・ホテル営業の場合)
    • ロビー、食堂等の共用スペース確保(簡易宿所営業の場合は不要)
    • フロント設備の設置
    • 建物改修費用
  3. 面積効率の悪化(旅館・ホテル営業の場合)
    • 客室以外に広大な共用スペースが必要(簡易宿所営業の場合は不要)
    • 収益性の低下

簡易宿所営業を選択すれば、ロビー・食堂の面積要件は適用されないため、旅館・ホテル営業よりも事業化が容易です。

立地面での制約

  • 用途地域による制限で、営業可能エリアが限定的
  • 商業地域、準工業地域など限られたエリアのみで事業展開可能
  • 物件取得費用が高額になる傾向

近隣対応の困難さ

  • 200m範囲内の住民への説明会開催義務
  • 近隣の理解を得られない場合、事業化が困難
  • 説明会での反対意見により、計画変更や中止を余儀なくされる可能性

渋谷区内で民泊(旅館業)を開設する場合のポイント

渋谷区で民泊事業を始める最も現実的かつ効率的な方法は、200㎡未満の既存建物を活用することです。

メリット

  1. ラブホテル規制条例の適用を回避できる
  2. 有人フロント不要(無人チェックイン可能)
  3. ロビー・食堂の面積要件なし
  4. 近隣説明会不要
  5. 審議会の審査不要
  6. 通常の旅館業法の手続きのみで許可取得可能
  7. 初期投資とランニングコストを大幅に削減

物件選定のポイント

  1. 面積確認
    • 延床面積が200㎡未満であることを確認
    • ギリギリを狙わず、余裕を持って190㎡以下程度を目安に
  2. 用途地域の確認
    • 旅館業法上、営業可能な用途地域であることを確認
    • 渋谷区内には文教地区も多数あるので注意
  3. 建物構造の確認
    • 旅館業法の構造設備基準を満たせるか
    • 消防法令適合が可能か
    • 採光・換気の基準をクリアできるか
  4. 立地条件
    • 最寄駅からのアクセス
    • 周辺環境(コンビニ、飲食店等)
    • 騒音問題の有無

注意点

  • 旅館業法の構造設備基準(客室面積、採光、換気等)は当然クリアする必要があります
  • マンション等の場合、管理規約で旅館業が禁止されていないか確認が必要です

民泊専門特定行政書士への相談が必須

「渋谷区=ラブホテル規制で無理」と思い込んで諦めている事業者が多いのが現状です。

しかし実際には、200㎡未満の既存建物を活用すれば、他の区と同様に民泊事業を始めることができます。

この事実を知っている事業者は少ないため、競合が少ない状態で渋谷という好立地を活かせるというビジネス上の大きなメリットがあります。

実績豊富な専門家にお任せください

当事務所は、200㎡未満の既存建物を活用した旅館業営業許可の取得実績を多数有しており、渋谷区内での許可取得も対応可能です。

  • 「渋谷区で民泊を始めたいが、ラブホテル規制が心配」
  • 「200㎡未満の物件があるが、本当に許可が取れるか確認したい」
  • 「どんな物件を選べばいいか相談したい」
  • 「許可取得まで一貫してサポートしてほしい」

このようなご相談に、実務経験豊富な行政書士が対応いたします。

渋谷という最高の立地で、適切な方法により民泊事業を成功させましょう。

お問い合わせ・ご相談

渋谷区での旅館業営業許可取得について、お困りのことがございましたら、お気軽にご相談ください。

当事務所の特徴

  • 200㎡未満の既存建物を活用した旅館業営業許可の取得実績多数
  • 渋谷区内での許可取得対応可能
  • 物件調査段階からのサポート
  • 旅館業法や建築基準法に精通した行政書士が対応
  • 事業計画の段階から許可取得、開業後の運営まで、トータルでサポート

本記事の内容は、令和7年12月時点の渋谷区ラブホテル建築規制条例に基づいています。条例や運用は改正される可能性がありますので、実際の手続きの際は、必ず最新の情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

特定行政書士  戸川大冊

特定行政書士  戸川大冊

旅館業許可・住宅宿泊事業・特区民泊などの宿泊施設許認可および政治法務が専門で、「民泊許可」の第一人者。様々な観光系企業の顧問や大学での講義を担当している。
テレビ朝日「羽鳥慎一モーニンショー」、フジテレビ「めざまし8」、NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に出演。