調査結果の公表
厚生労働省から平成27年に「旅館業法の遵守について」の通知が発せられましたが、発出後の各自治体における対応状況等を把握するために実施された調査の結果が公表されました。平成28年4月22日に実施された第9回「民泊サービス」のあり方に関する検討会にて公表された資料をもとに、各自治体の対応状況や無許可民泊事業の実態について見てみます。
無許可民泊事案への対応
無許可民泊事案の把握数
旅館業法上の営業許可を得ていない、いわゆる「ヤミ民泊」の認知件数が、平成27年度には1月までで1,000件に迫っています。
- 平成25年度 62件
- 平成26年度 131件
- 平成27年度※ 994件
※平成27年度は、平成27年4月~平成28年1月末までの件数
無許可民泊を把握した経緯
平成27年に無許可民泊の認知件数が急増した理由としては、近隣住民や宿泊者等からの通報に加えて、保健所における巡回指導が増えたことも挙げられています。従来は、保健所が能動的に巡回指導することは少なかったようですが、民泊への注目度が高まるとともに無許可民泊の問題もクローズアップされてきたため、保健所の巡回指導も増えているようです。
平成28年度には旅館業法の運用が緩和されたため、簡易宿所の営業許可を取得したうえで民泊事業を実施することが以前に比べて容易になりました。そのため、今まで以上に保健所の巡回指導が強化されると予想されます。
無許可民泊事業者への保健所の指導状況
調査結果によると、指導により無許可民泊の営業を中止したケースが平成27年度で354件あります。その一方で、指導を継続中のケースが325件で、そのうち許可に向けた指導を行っているものは93件に過ぎません。すなわち、指導を継続中のケースのうち232件は営業中止にも許可取得にも応じないものと考えられます。このような悪質なケースについては、過去に逮捕にまで至ったものもあります。
また、所在地や営業者が不明であったり営業者と連絡が取れないなどのケースも220件あります。民泊営業の実態が不明である無許可民泊は、かなり悪質なものといえます。近隣住民だけでなくゲストにも迷惑がかかるため、このような悪質ヤミ民泊は駆逐すべきでしょう。
今後の見通し
運営者の連絡先も分からないようなヤミ民泊は、海外からのゲストが安心して過ごせる民泊とはいえません。民泊に関する新しい枠組みが整備されるにつれて、無許可民泊に対する取締が強化されることが望ましいといえます。
無許可のヤミ民泊は、行政法上のみならず民事上も大きなリスクを抱えることになります。法的なリスクを正しく理解して民泊事業を実施することが必要です。