特区民泊の最低宿泊数引き下げへ
新聞各紙で報道されている通り、特区民泊の最低宿泊数引き下げが決定され、首相官邸から発表されました。
国家戦略特別区域における「特区民泊」は東京都大田区や大阪府で実施済みですが、今年の10月以降には大阪市でも実施されます。今までは7日以上であった最低宿泊数が引き下げられることで、利用者の増加が見込まれます。
合法的に民泊事業を実施するための「民泊許可」としては、特区民泊届出と簡易宿所許可がありますが、特区民泊届出の方がハードルが低くなっています。しかし、最低宿泊数がネックとなり、多くの事業者は特区民泊届出に消極でした。今回の決定でネックが解消されたため、これを契機として特区民泊届出が増加すると見込まれます。
フロント共有に言及
今回の発表で注目されるのが、次の部分です。
特区民泊では玄関帳場の運用に関して柔軟な対応が可能なため、特区民泊の事業者はITを活用したり外部にチェックイン場所を設けたりと様々な工夫をしています。そのような中で、今回の決定文では近隣のホテルに業務委託することに対して好意的な評価が述べられています。この言及を受けて、今後は同様の運用法を他の地域でも実施することが可能になりそうです。
最低宿泊数は2泊3日へ
特区民泊における「最低宿泊・利用日数」が、現行の「6泊7日」から「2泊3日」に 引下げられます。この要件緩和を行うため、直ちに、必要な法令上の措置を講ずるとされています。具体的には政令の改正が実施される予定です。
首相官邸発表内容
国家戦略特区における追加の規制改革事項について(案)
平成 28 年 9 月 9 日
国家戦略特別区域諮問会議
○ 特区における「民泊」の最低宿泊・利用日数の引下げ
・ 内外観光客等の宿泊ニーズの急増に対応するため、本年2月より東京都大田区や大阪府門真市・藤井寺市などの国家戦略特区において行っている、いわゆる「民泊」事業(特区民泊)については、現 時点で、既に 22 事業者(うち個人事業者6人)が運営する 27 の宿泊 施設(63 室)を認定することにより、滞在者の合計は208人(うち外国人104 人)にも上っており、特区民泊は、順調に実績を伸ばしてき ていると評価できる。
・ 特に、大田区では、民泊事業者が旅館組合を通じ、近隣ホテルに 鍵の受け渡しや本人確認の業務を委託することにより、事実上双方でフロントを共有する試みが見られるなど、民間の知恵・アイデアを活かした好事例も生まれてきている。また、近隣の住居などへの配 慮を十分に行うことで、地域社会に受け入れられることも確認されて いる。
・ また、本年中には、福岡県北九州市など、その他の国家戦略特区 でも関係条例が整備され、特区民泊が開始される予定である。
・ これらの実績等を踏まえ、「日本再興戦略 2016」(平成 28 年6月2 日閣議決定)に基づき、国家戦略特区に係る区域会議において関係の地方自治体や民間事業者等から随時、事業実施に伴う具体的 な諸課題に係る意見聴取等を行ってきた。
・ その結果、現在内閣府及び厚生労働省の共同通知により事業者に義務付けている近隣住民との調整や宿泊者名簿の設置などの措置を、より効果的かつ透明なものとするため法令上明記するととも に、地域の事情により異なる宿泊施設の不足状況等に適切かつ迅 速に対応できるよう選択肢の幅を拡げるとの観点から、特区民泊における「最低宿泊・利用日数」を、現行の「6泊7日」から「2泊3日」に 引下げるとの要件緩和を行うため、直ちに、必要な法令上の措置を講ずる。 なお、これらのほか、今後整備される全国ルールの検討に併せて、 行政庁による立入検査に係る法的措置も検討する