福岡市がイベント民泊の呼びかけ
福岡市が、個人の家やマンションを料金を取って宿泊場所に提供する「民泊」への協力を市民に募り、ホームページで呼びかける模様です。
当サイトで解説している通り、民泊は、消防法、建築基準法などの規制を受けます。ただし、厚生労働省は、イベントなどで宿泊施設が不足する場合、自治体の要請に基づき、条件を満たす一時的な民泊は認める指針を示しています。市の見解によれば、今回はこれに該当するとのことです。
イベント民泊は「旅館業」に該当しない
民泊を、旅館業法で定める「簡易宿所」と位置付けた上で営業を許可することが検討されていますが、福岡市の件では「簡易宿所」の営業許可すら不要ということになります。この「イベント民泊」はなぜ簡易宿所営業許可が無くても実施することができるのでしょうか。
イベント民泊の位置づけを知るためには、旅館業の定義を正確に理解することが必要です。人を宿泊させる時に旅館業許可が必要なのは、どのようば場合でしょうか。詳しくは以下のページをご確認ください。
旅館業法が適用される場合の判断基準旅館業の定義は「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」です。この定義を分解すると以下のようになります。
- 「宿泊料」を受けて
- 人を「宿泊」させる
- 「営業」
このうち、3の「営業」要件は、さらに2つの要素に分解できます。すなわち、「社会性」と「反復継続性」です。
イベント民泊を考える上でポイントとなるのは「反復継続性」です。
イベント民泊は「反復継続」しない
イベント民泊は、イベントが開催されるために宿泊施設が一時的に不足すると見込まれる際に実施されるものです。このイベント民泊が実施されるのは、年1回(2~3日程度)のイベント開催時のみです。
さらに、開催地の自治体の要請等により実施するような公共性の高いものを「イベント民泊」と呼んでいます。
市では、大きな催しやコンサートの際にホテルが予約できないことが多く、嵐(17~19日)とエグザイル(26、27日)のコンサートの際も、「多くのホテルが満室状態」(市の担当者)という。
市は募集を通じて民泊の提供場所を把握するが、応募者は民泊のあっせんサイトなどで自ら宿泊者を募ることになる。
朝日新聞2015年12月8日
福岡市は慢性的に宿泊施設が不足
現在、福岡市ではホテルが圧倒的に不足しています。インバウンドの観光客のみならず、国内の出張旅行者もホテルの確保が困難な状況です(筆者も毎回苦労しています)。しかしながら、福岡市では国家戦略特区の外国人滞在施設経営事業が認められていません。
旅館業法の要件緩和による民泊解禁により、福岡市でのホテル供給不足が解消されることが期待されます。
※本記事で扱った「イベント民泊」実施後に、福岡市の旅館業法施行条例が改正され、福岡市内で民泊が実施可能になりました。詳しくは以下の記事をご確認ください。