旅行業法と通訳案内士法の改正案
訪日外国人旅行者の受入環境の整備を図るため、通訳案内士資格に係る規制を見直す とともに、旅行の安全や取引の公正を確保するため、旅行に関する企画・手配を行うい わゆるランドオペレーターの登録制度の創設等の措置を講じる「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。
通訳案内士の不足
近年、訪日外国人旅行者が急増し、昨年はその数が 2400 万人を突破しました。
地方への誘客を進めながら、訪日外国人旅行者の更なる増加を図るためには、地域をはじめとする通訳ガイドの質・量の確保や地域独自の自然や文化を体験できる旅行商品の提供を促進していくことが重要です。しかし、現状では通訳案内士が都市部に偏在するとともに、資格保有言語も英語への偏りがあります。通訳案内士は、量的に圧倒的に不足しており、このままでは多様化するニーズに対応不可能です。
また、長期滞在する訪日外国人旅行者や増加するリピー ターによる地域独自の文化や産業の体験・交流などを重視した旅行商品(いわゆる「地域体験・交流型旅行商品」)に対するニーズの高まりをうけて、通訳案内士による業務独占が多様なガイドを提供する妨げになっていました。
そこで、幅広い主体による通訳ガイドを可能にするため、 業務独占規制を廃止するとともに、 地域ガイド制度が新設されます。
悪質ランドオペレーターの横行
旅行に関する企画・手配を行ういわゆる「ランドオペレーター」の不健全な業務実態によって旅行の安全や取引の公正が脅かされる事案も発生しています。すなわち、旅行業者が旅行サービス手配業者(いわゆる「ランドオペレー ター」)に旅行手配を丸投げすることにより、訪日観光客に関わる安全性が低下する事案が発生しています。
また、訪日外国人旅行の一部において、キックバックを前提としたお土産屋への連れ回し、高額な商品購入の勧誘しているケースもあります。
このようなランドオペレ ーター業務の適性化を図り、旅行商品の質の確保や訪日旅行者の保護を図ることも急務となっています。
そこで、訪日旅行商品の企画・手配を行っているランドオペレーター等の業務の適正化を図る制度が導入されます。
改正案の概要
通訳案内士法関係
1.通訳ガイドの量の確保
通訳案内士資格について、業務独占から名称独占※へと規制を見直し、幅広い主体による通訳ガイドを可能にします。
※ 資格を有さない者が、当該資格の名称や類似名称を用いることができないとする規制。
通訳案内士について、全国対応のガイドである全国通訳案内士に加えて、地域による地 域に特化したガイドである地域通訳案内士の資格制度を創設します。
2.通訳案内士の質の向上
全国通訳案内士の試験科目に実務項目を追加する等適正化するとともに、全国通訳案内士に対し定期的な研修の受講を義務付けます。
旅行業法関係
1.地域の観光資源・魅力を生かした体験・交流型旅行商品の企画・販売の促進
営業所ごとに選任が必要な「旅行業務取扱管理者」について、特定地域の旅行商品のみを取り扱う営業所に対応した「地域限定旅行業務取扱管理者」資格を創設します。
「旅行業務取扱管理者」の1営業所1名の選任基準を緩和します。
2.旅行サービス手配業者の業務の適正化
旅行サービス手配業(いわゆるランドオペレーター)の登録制度を創設し、管理者の選任、書面の交付等を義務付けます。