特区外の「民泊許可」は「旅館・ホテル」「簡易宿所」営業許可を取得
日数制限なく営業する「民泊」は、国家戦略特区内で実施する「特区民泊」と旅館業法の「旅館・ホテル」の類型により実施する旅館業民泊があります。
日数制限なく営業する民泊
- 国家戦略特区内→特区民泊or旅館業型民泊(特区民泊の方が要件緩い)
- 国家戦略特区外→旅館業型民泊(旅館業の営業許可を取得する=旅館業法が適用される)
このページでは、国家戦略特別区域以外の場所で日数制限なく民泊を開業する場合に民泊営業に適用される「旅館業法」の規制について解説しています。
大阪市や東京都大田区などの国家戦略特別区域(国家戦略特区)で「特区民泊」を実施する場合には、以下のページをご確認ください。
・【特区民泊】有資格者の申請で民泊許可を取得して民泊を始める方法とは?(大阪など国家戦略特区の特例)
民泊を実施する場合に、当該施設に対して旅館業法の適用があるか否かについては、以下のリンクページをお読み下さい。
・【旅館業法】民泊に旅館業法の許可が必要かどうかの「判断基準」
「民泊」も旅館業に入るのか?
旅館業とは「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」と定義されています。
「宿泊」とは「寝具を使用して施設を利用すること」とされています。
すなわち、旅館業は「人を宿泊させる」ことであり、生活の本拠を置くような場合(例えばアパートや間借り部屋な)は貸室業・貸家業であって旅館業には含まれません。
また、「宿泊料を受けること」が要件となっているため、宿泊料を徴収しない場合は旅館業法の適用は受けません。ただし、宿泊料は名目のいかんを問わず実質的に寝具や部屋の使用料とみなされるものは含まれます。具体的には、休憩料はもちろん、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱水道費、室内清掃費も宿泊料とみなされます。
さらに、宿泊施設付きの研修施設(セミナーハウス)等が研修費を徴収している場合も、例えば当該施設で宿泊しないものも含め研修費は同じとするなど当該研修費の中に宿泊料相当のものが含まれないことが明白でない限り研修費には宿泊料が含まれると推定されます。ただし、食費やテレビ・パソコン使用料など必ずしも宿泊に付随しないサービスの対価は宿泊料には含まれません。
「営業」とは、反復継続の意思を持ち、且つその行為が社会性を有している行為をいいます。
以上より、宿泊料又は室料を受けて人を宿泊させる施設で、反復継続の意思を持ち、且つその行為が社会性を有している場合は、すべて旅館業法による規制の対象となります(会員制や、会社の研修施設等特定の人を対象とする宿泊施設も含まれます)。したがって、いわゆる「民泊」も旅館業に該当するため旅館業許可を得なければ開業できません。
旅館業の営業者は、施設を構造設備基準及び衛生管理基準に適合させることが義務付けられています。
「民泊」も「旅館業」にあたる。
旅館業の種類
旅館・ホテル営業
以前は、10室以上の洋式客室を主体とする宿泊施設を「ホテル営業」といいました。また、5室以上の和式客室を主体とする宿泊施設を「旅館営業」と呼んでいました。
旅館業法の改正により、上記の「ホテル営業」と「旅館営業」が統合されて、「旅館・ホテル営業」となりました。従前は最低客室数の規定があったため、旅館営業やホテル営業では「民泊」の営業はできませんでしたが、法改正により最低客室数の規定が撤廃されたため、現在では「旅館・ホテル営業」で民泊を営業するのが合理的です。
インターネット上の古い情報などでは、いまだに「民泊許可=簡易宿所営業の許可」と記載されているものもあるので注意が必要です。
簡易宿所営業
客室を多数人で共用する宿泊施設での営業形態です。いわゆるカプセルホテルや民宿、キャンプ場のバンガローなどが該当します。
旅館業法改正以前には、合法的な「民泊」はこの簡易宿所で営業許可を取得していました。農業や漁業体験型の「農家民宿」では、要件が緩和される特例があります。
下宿営業
一月以上の期間を単位とする宿泊施設での営業形態です。
「民泊」は「旅館・ホテル」の営業許可で実施(一部は「簡易宿所」)。
旅館業を開業するには特別な資格が必要?外国人でもOK?
簡易宿所などの旅館業を開業するためには旅館業の営業許可を取得する必要がありますが、その許可を得るために特に資格は必要ありません。
また、国籍や法人の種類も問われないため、日本国籍を持たない外国人や宗教法人・NPO法人などの各種法人であっても申請可能です。
ただし、他人に代わって手続書類を作成するためには行政書士の資格が必要です。申請者本人以外が報酬を得て代理人として申請書を作成し、保健所への申請手続きを代理できるのは行政書士だけです。一部の悪質な「民泊コンサルタント」や「建築士」が手続を代理していますが、それらは全て違法です。
無資格代理人による違法な手続によるトラブルが多発しているのでご注意ください。
旅館・ホテルの構造設備要件
「旅館・ホテル」の設備要件について概要をまとめました。旅館業法上の要件とは別に、各自治体の条例によって更に要件が加えられている場合が多いです。
旅館業民泊の営業許可を取得する場合には、所在地情報と図面をご用意の上で、お問い合わせフォームから弊所にご相談下さい。
- 客室数
制限なし - 客室床面積
7 ㎡以上(寝台を置く客室にあっては 9 ㎡以上) - 玄関帳場
宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他当該者の確認を適切に行うための設備として厚生労働省令で定める基準に適合するもの。
→「その他当該者の確認を適切に行うための設備」の要件は以下の二点
一 事故が発生したときその他の緊急時における迅速な対応を可能とする設備を備えていること。
二 宿泊者名簿の正確な記載、宿泊者との間の客室の鍵の適切な受渡し及び宿泊者以外の出入りの状況の確認を可能とする設備を備えていること。
(但し、各自治体で上乗せ条例あり。) - 換気等
適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。 - 入浴設備
当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障を来さないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる適当な規模の入浴設備を有すること。 - その他
条例で定める構造設備の基準に適合すること。
簡易宿所の構造設備要件
「簡易宿所」の設備要件について概要をまとめました。旅館業法上の要件とは別に、各自治体の条例によって更に要件が加えられている場合が多いです。
簡易宿所型民泊の営業許可を取得する場合には、所在地情報と図面をご用意の上で、お問い合わせフォームから弊所にご相談下さい。
- 客室数
制限なし - 客室床面積
延べ床面積3.3㎡/人 以上 - 玄関帳場
規制なし(但し、各自治体で上乗せ条例あり。) - 換気等
適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること。 - 入浴設備
当該施設に近接して公衆浴場がある等入浴に支障をきたさないと認められる場合を除き、宿泊者の需要を満たすことができる規模の入浴設備を有すること。 - その他
条例で定める構造設備の基準に適合すること。
民泊許可取得までの手続きの流れ
事前相談
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旅館業法について
旅館業の営業許可については、法律や条例に基づく構造設備の基準、衛生管理上の基準が適用されます。また、営業者の人的要件および立地条件に関する規定等があります。
このため、計画中の「民泊」が旅館業の簡易宿所に該当するかどうか、旅館業営業の可否について判断が必要となります。民泊を計画中の方は、施設の平面図などを持参のうえで、行政書士へ御相談下さい。
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その他の法令について
民泊施設は、新設・既存にかかわらず、消防法、建築基準法といった旅館業法以外の法令にも関係してきます。関係法令についても適法性を確認します。
・【消防法】物件選定前に必見!民泊許可申請や届出で注意すべき消防用設備等の工事とは?
・【建築基準法】物件選定時に要注意!民泊物件の選定では用途地域の確認に注意が必要
営業許可申請
営業許可の申請を行います。旅館業を経営するときは、施設完成後に構造設備が基準に適合していることの検査を受ける必要があります。
申請書に必要な書面等
※東京都豊島区の場合
旅館業営業許可申請書及び添付書類
- 旅館を中心とした半径300メートル以内の住宅、道路、学校等の見取図
- 建物配置図、各階平面図、正面図及び側面図
- 客室等にガス設備を設ける場合は、その配管図
- 法人の場合は、定款又は寄付行為の写し及び登記事項証明書
農家民宿の特例について
旅館業法の簡易宿所営業の場合には、建築基準法(用途)や消防法(防火設備)で厳しい規制が課されています。そのため、実際に簡易宿所営業許可を取得しようとすると、様々なハードルをクリアしなければなりません。民泊営業を行う場合には、これらの規制をクリアするのは困難な場合が多くあります。
簡易宿所営業でありながら、このような規制が緩和されるものとして「農家民泊」があります。平成28年の旅館業法改正により、この農家民宿を運営することが容易になりました。
農家民宿の詳しい解説は以下のページを御確認ください。