【特区民泊】最低2泊3日から利用可能へ政令を改正

日数要件が緩和

2016年10月25日の閣議で政令の改正が決定され、特区民泊の日数要件が「6泊7日以上」から「2泊3日以上」に緩和されました。10月31日から施行されます。

従来は、特区民泊は最低でも6泊7日の宿泊でなければ部屋を貸し出すことはできませんでした。ホテルと異なり、特区民泊は長期の滞在を想定した宿泊施設として解禁されたためです。

しかし、民泊に参入を検討している事業者アンケートでは 「7日以上の滞在要件」 を課題とする声が最多であり(約8割が回答)、最低宿泊日数が特区民泊を届け出る上で最大のハードルでした。

そこで、国家戦略特区の趣旨を実現させ、増大するインバウンドなどの滞在ニーズに対応するため、 「最低滞在日数の短縮化」 について大阪市や大阪府から強く要請されており、政府において検討されてきたものです。

この日数要件の緩和は、すでに首相官邸から発表済みのものであり目新しいものではありません。

【特区民泊】最低宿泊・利用日数の引下げが決定

内閣が政令の改正を決定

国の法令(法律や政令)は、厳しい「縦関係」に支配されています。上から法律、政令(例:施行令)、省令(例:施行規則)の順に序列が決まっています。

国の法令の中で最高位にあるのが法律です。政令も省令も法律に反することはできません。法律だけが国民を代表する国会により民主的に制定されたものだからです。その次が内閣の定める「政令」、次いで各大臣が定める「省令」(内閣府の場合には「府令」といいます)といった序列になります。内閣とは、内閣総理大臣をはじめとした各大臣の集まりで、行政権の本丸です。したがって、内閣が定める政令は一人の大臣が発することができる省令・府令より序列が上となります。

今回の特区民泊に関する最低宿泊日数の規定は、政令の改正によって実現しました。つまり、内閣が定めたものです。

実施済みの特区民泊がすぐに2泊3日宿泊可能にはならない

特区民泊における最低宿泊日数短縮の閣議決定に関するニュースが大きく報道されたことにより、既に実施している特区民泊が明日から2泊3日で募集可能になったと勘違いするホストが続出しています。弊所のクライアントからも「Yahoo!ニュースでみた」という問い合わせが多数寄せられました。

しかし、本日の閣議決定により実施済みの特区民泊が直ちに2泊3日OKになる訳ではありません。注意が必要です。今回の決定はあくまでも政令の改正についてであり、各自治体で政令の内容を反映するためには条例改正が必要だからです。

特区民泊の最低宿泊日数短縮には条例改正が必要

特区民泊の制度を導入するためには、単に特区に指定されるだけではなく、特区民泊に関する条例を制定する必要があります。そして、その条例の中で最低宿泊日数も規定されています。

条例で日数要件を規定すべきことは、国家戦略特区法施行令で定められています。

国家戦略特別区法施行令 第十二条

法第十三条第一項 の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当するものであることとする。
一  (略)
二  施設を使用させる期間が七日から十日までの範囲内において施設の所在地を管轄する都道府県(その所在地が保健所を設置する市又は特別区の区域にある場合にあっては、当該保健所を設置する市又は特別区)の条例で定める期間以上であること

したがって、この「条例」を改正しなければ実際の日数要件は緩和されません。

上乗せ条例と同じ問題

上記の問題は、旅館業法施行条例における「上乗せ条例」と同じ論点といえます。旅館業に関する法律である旅館業法が改正されたり、旅館業に関する省令の改正が続いていますが、そのような民泊に関する緩和措置を実施するためには各地の条例改正が必要なケースが大半です。

すなわち、法律レベルで緩和されても、上乗せ条例が存在する場合にはその条例を改正する必要があるのです。

法律が認めても条例が民泊を許さない!法律より厳しい条例規制【上乗せ条例】の問題を解説します


特定行政書士 戸川大冊
small早稲田大学政治経済学部卒/立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)
民泊許可手続の第一人者。日本全国の民泊セミナーで登壇し累計850人以上が受講。TVタックルで民泊について解説。政治法務の専門家行政書士として日本全国の政治家にクライアントが多数。 民泊を推進する日本全国の自治体政治家や国会議員にネットワークを持つ、日本で唯一の行政書士。
ビートたけしのTVタックル、NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に取り上げられている。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、東京新聞、週刊誌などでも掲載多数。

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