旅館業法施行令の改正
2016年4月1日から、旅館業法施行令が改正され、あわせて厚生労働省通知も改正されました。これにより、法律上はフロント設備が不要になり、また面積要件も緩和されたため、旅館業法上の簡易宿所営業に関する許可基準はハードルが下がりました。
改正内容についてはこちらを御覧くださいしかし、法律レベル(旅館業法や旅館業法施行令)では緩和されても、各地の自治体が条例で独自の規制を課しているため、従来通り旅館業法上の営業許可に関するハードルが高いままのケースも多くあります(上乗せ条例の問題)。
上乗せ条例についてはこちらを御覧ください今回の記事では、旅館業法の運用緩和に関連した各地の自治体の動向をいくつか紹介いたします。
長野県軽井沢町【厳格化】
軽井沢町では、不特定多数による利用や風紀を乱すおそれがあることから、民泊施設の設置については、町内全域で認めないこととし、基準を設けました。
1.民泊施設は、町内全域において認めません。
2.カプセルホテルその他これに類する施設の設置は、町内全域において認めません。
上記のうち、「カプセルホテルその他これに類する施設」とは旅館業法上の簡易宿所を指します。すなわち、軽井沢町では旅館業法上の簡易宿所営業許可を取得した民泊営業(いわゆる、「簡易宿所型民泊」)は町内全域で認められません。
東京都台東区【厳格化】
旅館業営業者の遵守事項及び簡易宿所営業施設の構造設備に関し規定を整備し、旅館業施設の安全性の一層の向上を図るためとの理由で、年度末の3月29日に条例案が提出され、全会一致で可決成立しました。旅館業法の運用緩和に合わせて、4月1日から駆け込み的に施行されています。
マンションを利用した民泊営業を封じ込めるために、新たに下記の要件を設けました。
1.営業施設には、適正な運営を行うため、営業時間中に営業従事者を常駐させること。
2.宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。
厚生労働省通知では、以下の通り「特段の御配慮をお願いする。」としているところ、これに真っ向から反する台東区の駆け込み的な条例改正は、厚生労働省や首相官邸に喧嘩を売っていると言えるでしょう。
生食発0330第5号 平成28年3月30日
特に、上記第2(別紙1新旧対照表)のとおり、玄関帳場等の設置について、宿泊者の数を10人未満として申請がなされた施設であって、要領のⅡの第2の3(1)及び(2)に掲げる要件を満たしているときは、玄関帳場等の設備を設けることは要しないこととするところ、改正の趣旨を踏まえ、簡易宿所営業における玄関帳場等の設置について条例で規定している都道府県等においては、実態に応じた弾力的な運用や条例の改正等の必要な対応につき、特段の御配慮をお願いする。
京都府京都市【取締強化】
先日放送された「ガイアの夜明け」でも取り上げられていましたが、京都市はプロジェクトチームを作って民泊の実態調査を行っています。
プロジェクトチームの詳細はこちらを御覧くださいairbnbを始めとした民泊サイトのリスティングを実際に検索し、リストアップしたうえで市が把握している旅館業の登録状況と照合しています。さらに、一部の物件については実際に現地に赴き、物件の状況を調査するとともに周辺住民への聞き取り調査も行っています。これらの調査は、ガイアの夜明けでも放送されていましたが、かなり踏み込んだものでした。
東京都内で民泊が多く実施されている新宿区や渋谷区においては、旅館業法の所管である保健所が、自ら民泊サイトを検索して民泊の実態を調査することはありません。地域住民からの苦情や通報を受けて調査を始めるケースがほとんどです。このような都内各区の対応と比べると、京都市の対応はかなり先進的です。
1月には、京都市民泊施設実態調査の中間報告がでました。この中間報告については当サイトでも取り上げております。報告によると、京都市内では2542件の民泊施設が「airbnb」に掲載されており、下京区、中京区、東山区で半数以上(1379件 54.2%)を占めています。建物の類型としては、戸建ての割合が34.6%、集合住宅の割合が62.2%となっており、集合住宅が高い割合を占めています。
中間報告の詳細はこちらを御覧ください