都市計画とは
「都市計画」とは都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、都市計画法の手続きにしたがって定められたものです。都市計画は、農林漁業との健全な調和を図りつつ、健康で文化的な都市生活及び機能的な都市活動を確保すべきこと並びにこのためには適正な制限のもとに土地の合理的な利用が図られるべきことを基本理念として定めるものとされています(都市計画法第2条)。
良好な市街地を形成し保全するため、「用途地域」や「高度地区」、「都市計画道路」などが指定されています。これらによって、建物の種類や構造、高さなどに対する制限があります。土地を買うときや家を建てるときには、あらかじめ都市計画の内容を調べてく必要があります。
今回は、民泊を実施する上で知っておくべき都市計画法の規制を解説します。
市街化地域と市街化調整区域
無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため、都市計画法では都市計画区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けています。
市街化区域とは、既に市街化を形成している区域と優先的かつ計画的に市街化を図っていく地域として、道路、公園、下水道等を積極的に整備していく地域です。用途地域を指定し、区画整理事業・市街地再開発事業等の市街地の開発などを行い、計画的なまちづくりを行います。
市街化調整区域とは、市街化を抑制すべき地域として、農地や自然環境を保全する区域です。農林漁業用の建物や一定の基準に合った計画的な開発(宅地造成)の他は、原則として開発行為は許可されません。
市街化地域:用途地域を指定し、区画整理事業・市街地再開発事業等の市街地の開発などを行う地域
市街化調整区域:市街化を抑制すべき地域として、農地や自然環境を保全する区域
民泊を実施できるのは「市街化地域」
市街化調整区域では市街化が抑制されているため、民泊の実施に対しては様々な制約があります。したがって、民泊許可を取得して民泊事業を始めるのであれば市街化地域の建物を利用するべきです。
しかし、市街化地域であればどこであっても民泊許可が取得できるわけではありません。市街化地域は更に用途地域が指定され、各用途地域ごとに用途が決まっています。
用途地域は12種類
都市計画法では、用途地域(ようとちいき)が定められています。これは、各地域の用途の混在を防ぐことを目的として、 住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるもので、第一種低層住居専用地域など12種類に分かれています。
建築物の用途や建ぺい率(敷地に対する床面積の割合)、容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)、高さなどに制限を加えることにより、多種多様な用途の建築物の混在を防止して、地域の性格に応じた良好な都市環境を形成することを目的として指定されるものです。
住居系 | 住居専用地域 | 第一種低層住居専用地域 |
第二種低層住居専用地域 | ||
第一種中高層住居専用地域 | ||
第二種中高層住居専用地域 | ||
住居地域 | 第一種住居地域 | |
第二種住居地域 | ||
準住居地域 | ||
商業系 | 近隣商業地域 | |
商業地域 | ||
工業系 | 準工業地域 | |
工業地域 | ||
工業専用地域 |
各用途地域で建設可能な建物の概要を解説した図が次のものです。用途地域によって、その場所のキャラクターが決まっています。イラストにすると分かりやすいですね。
用途地域は、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地利用を定めるものです。用途地域が指定されると、それぞれの目的に応じて、 建てられる建物の種類が決められます。地域の目指すべき土地利用の方向を考えて、地域の地図を色で塗り分けるように区分します(用途地域を示した地図は実際に用途地域ごとに色分けされています)。
用途地域ごとの民泊可否
用途地域に応じて建設可能な建物の種類が決まるため、用途地域によっては宿泊施設(旅館)を建設できない場合もあります。用途地域の種類ごとに宿泊施設が建設可能か否かを一覧表にしたものが下の画像です。
一覧表にあるように、「旅館業」が可能な用途地域は第2種住居地域、準工、商業などです。いわゆる「閑静な住宅街」である、「低層住居専用地域」は含まれません。
したがって、「閑静な住宅街」や「高級住宅街」と呼ばれるような地域では旅館業は開業できず、これは特区民泊や民泊新法についても準用される見込みです。各用途地域における住居の環境の保護や、商業・工業等の業務の利便の増進を図るために、建築することができる建築物の用途について制限が行われているのです。
ホテル・旅館の防火・避難規定
界壁・間仕切壁、用途による耐火建築物等要求、廊下の幅、居室から直通階段までの距離、2以上の直通階段、避難階段の設置、排煙設備の設置、非常用照明装置の設置、内装制限、屋内階段の寸法などについて規制があります。
ただし、2階以下・200㎡未満の規模の戸建住宅をホテル・旅館とする場合、通常、住宅用防災警報器などの設置で対応可能となるよう規制を緩和している他、 共同住宅をホテル・旅館とする場合、通常、居室への非常用照明装置や住宅用防災警報器などの設置で対応可能となるよう規制を緩和しています。
消防法にも注意が必要
建物の防火設備や防火体制に関しては、消防法にも規定があります。消防署に届け出を行う際には、当該建物の設備が消防法令に適合している必要があります。
当サイトでは消防法についても解説しています。是非ご覧ください。
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