新型コロナウイルス感染症対策で自動チェックイン機導入が増えている
新型コロナウイルス感染症対策として、ICT機器による玄関帳場代替設備を活用した非対面型自動チェックイン機を導入するホテルが増えています。
今回は、対面型か非対面型チェックイン機かを問わず宿泊者名簿で記載が必要な事項について解説します。ICT機器による本人確認に不安があるホテル事業者の方も、本記事を参考にして新型コロナウイルス感染症対策として非対面型フロントの導入をお勧めします。
宿泊者名簿とは?
ホテル等において感染症が発生し、又は感染症患者が宿泊した場合にその感染経路を調査すること等を目的として(昭和32年10月8日環境発第51号厚生省公衆衛生局環境衛生部長回答)、営業者は、宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の事項を記載することと規定されています(旅館業法第6条)。この名簿を「宿泊者名簿」といいます。
この名簿は宿泊者自身が記入する必要はなく、フロントの係員が宿泊者から聞き取りをして記入することも可能です。そのため、旅館業法第6条第2項では、宿泊施設の従業員から質問された場合には宿泊者は所定の事項に回答しなければいけないと規定されています。
旅館業法第6条
営業者は、厚生労働省令で定めるところにより旅館業の施設その他の厚生労働省令で定める場所に宿泊者名簿を備え、これに宿泊者の氏名、住所、職業その他の厚生労働省令で定める事項を記載し、都道府県知事の要求があつたときは、これを提出しなければならない。
2 宿泊者は、営業者から請求があつたときは、前項に規定する事項を告げなければならない。
宿泊者名簿への記載事項(法律上の義務)
旅館業法では、以下の情報を記載するよう求めています。
全ての宿泊者
- 宿泊者氏名
- 住所
- 職業
日本国内に住所を有しない外国人
- 国籍
- 旅券番号
法第六条第一項の宿泊者名簿(以下「宿泊者名簿」という。)は、当該宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置を講じた上で作成し、その作成の日から三年間保存するものとする。
2 略
3 法第六条第一項の厚生労働省令で定める事項は、宿泊者の氏名、住所及び職業のほか、次に掲げる事項とする。
一 宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号
二 その他都道府県知事が必要と認める事項
日本人と外国人旅行者では対応が違う
日本国内に住所を有しない外国人宿泊者に関しては、宿泊者名簿の国籍及び旅券番号欄への記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存する必要があります。なお、旅券の写しの保存により、当該宿泊者に関する宿泊者名簿の氏名、国籍及び旅券番号の欄への記載を代替しても差し支えありません。
営業者の求めにもかかわらず、当該宿泊者が旅券の呈示を拒否する場合は、当該措置が国の指導によるものであることを説明して呈示を求め、さらに拒否する場合には、当該宿泊者は旅券不携帯の可能性があるものとして、最寄りの警察署に連絡する等適切な対応を行うことになります。
外国人旅行者への宿泊受付時の対応方法をフローチャートにするとこのようになります。
以上が法律上の義務でした。上記の情報に加えて、条例により追加で規定された事項も記載する必要があります。
宿泊者名簿の記載事項(条例上の義務)
条例で規定された記載項目はどのようなものがあるのでしょうか。例として東京都新宿区の条例(条例施行規則)を見てみます。
新宿区内のホテルでは、旅館業法で規定された「宿泊者氏名」「住所」「職業」以外に、「性別」「年齢」「前泊地」「行先地」「到着日時」「出発日時」「室名」を記載する必要があります。
新型コロナウイルス感染症に関する報道でも知られるようになりましたが、感染症が発生した場合には感染経路を特定する必要があります。ホテルにおいて感染症が発生したり感染症患者が宿泊した場合にもその感染経路を調査することが必要なため、どこから来たのか(=「前泊地」)や次にどこへ行くのか(=「行先地」)を記録する必要があります。
- 性別
- 年齢
- 前泊地
- 行先地
- 到着日時
- 出発日時
- 室名
このように条例の規定により宿泊者名簿へ記載する必要がある項目は、各地の自治体により内容が異なります。自治体によっては条例による上乗せ規定がない場所もありますが、新宿区の規定とは違った項目を記載するよう義務付ける場所もあります。
旅館業営業許可を申請する際には、申請場所の条例等を正確に理解して対応する必要があります。専門の特定行政書士へ御相談ください。
省令第4条の2第3項第2号の区長が必要と認める事項は、次に掲げるとおりとする。
(1) 性別
(2) 年齢
(3) 前泊地
(4) 行先地
(5) 到着日時
(6) 出発日時
(7) 室名