京都市が民泊110番を新設
京都市は6月にも専用の電話番号とメールアドレスを用意して、「ヤミ民泊」の通報を受ける専門の窓口を新設するそうです。京都市はこれまでも民泊に対して強硬な政策を実施してきましたが、ついに専門の通報窓口を設けるまでになりました。
市は6月にも専用の電話番号とメールアドレスを用意する。大きな荷物を持った外国人が連日のように出入りし、騒音がひどいといった通報を受けると、市職員が現場に出向いて状況を調べ、宿泊施設を提供する個人や事業者に事情を聴くなどする。
朝日新聞 2016年5月25日
ヤミ民泊の苦情を、どこが受けるか
近所の一戸建てや、マンション内の住戸で民泊を実施している疑いがある場合、どこに通報するのが適切でしょうか。通報先としては、保健所と警察が考えられます。
しかし、一般の住民にとっては保健所や警察のどの部署に相談すべきか分からず、ヤミ民泊の疑いがあっても放置するせざるを得ないケースが多くありました。
保健所は無許可の「ヤミ民泊」を取り締まれない
保健所は、旅館業法を所管しています。したがって、旅館業の営業許可を持った合法的な「民泊」に対しては、旅館業法等に基いて指導することができます。
指導に従わない場合には、旅館業の「営業許可」が取り消される可能性もあります。また、許可が取り消しにならないまでも、営業停止の処分を受ける可能性もあります。そのため、保健所の指導には実効性が担保されています。
しかし、「ヤミ民泊」は旅館業法の営業許可を持たない違法な営業なので、営業許可を前提とした指導は実効性を持ちません。旅館業の営業許可を取得するように指導するのが限界です。したがって、最初から営業許可を取得する意思もなく、違法な営業で短期的な利益を上げよう企んでいる「ヤミ民泊」業者に対しては無力といえます。
警察も多忙
一方、警察に通報した場合でも、ヤミ民泊の迅速な取り締まりを期待することはできません。旅館業法では、許可を受けないで旅館業を経営した者に対する罰則は「六月以下の懲役又は三万円以下の罰金」と規定されています。旅館業の無許可営業は確かに犯罪ですが、罰則が重くないため警察も積極的に捜査に取り組むことはありません。
通報する際には、具体的な事実を説明して犯罪行為が明らかであることを伝えなければいけません。しかし、ヤミ民泊がどのように実施されているか詳細に調査することは、一般住民には過大な負担だといえます。
民泊110番の意義
上記のように、ヤミ民泊を通報しようと思っても担当部署が明確でなく、どこへ行っても迅速な対応は期待できないのがこれまでの実情でした。
しかし、京都市が新設する「民泊110番」では、市の職員が現場に出向いて状況を調べたり事情を聞くなどの調査を実施します。さらに、悪質なケースでは刑事告発も検討するそうです。
刑事告発が可能な程度に資料が揃っていれば、警察も機動的に捜査が可能です。違法な「ヤミ民泊」を撲滅するため、京都市の取り組みに期待したいと思います。
旅館業法上の許可がない違法なケースが見つかった場合、営業を中止させる。悪質なケースは刑事告発も視野に入れる。
朝日新聞 2016年5月25日