宿坊とは
民泊の発展形として「宿坊」に関する問い合わせが増えています。
宿坊とは、仏教寺院や神社の宿泊施設で、僧侶や参拝者のために作られた宿泊施設です。最近の「民泊」ブームや、異文化体験に関心が高い外国人観光客のインバウンド需要から、新たに宿坊を開始しようと検討している寺社が多くなっています。
宿坊では、一般の民泊とは異なり寺社の歴史や信仰を背景にした「日本の心」や「文化」を体感できるため特に外国人に人気が高い施設となっています。一般の宿泊施設にはない宿坊の魅力を広める動きも活発になています。
宿坊と旅館業法
以前は「宗教行為」と解釈
禅宗の寺院などでは、寺社で宿泊しながら修行又は修行体験をを行うという「宿坊」を提供する場所が多くありました。この場合には、宿坊は宗教行為の一環とも考えられるため旅館業許可を必要としないと解さるケースが大半でした。
最近は「旅館業」許可を取得するケースが多い
しかし、近年では体験型ツーリズムの一類型として宿坊が注目を集めてきたため、宗教行為と捉えるのではなく旅館業として営業許可を得ることが多くなっています。複数回来日する外国人観光客のリピーターが増えるにつれて、宿坊へ宿泊したりお寺で修行体験をすることに対する需要が高まっています。
「旅館業」とは?
旅館業法で規定されている「旅館業」とは、【宿泊料】を得て人を【宿泊】させる【営業】とされています。したがって、以下の3つの要件を満たすものは「旅館業」に該当し、旅館業の許可を得る必要があります。
- 宿泊料=「宿泊の対価」
- 宿泊=「寝具を使用して施設を利用すること」
- 営業=「社会性をもって継続反復されているもの」
旅館業に該当するか否かについては、旅館業とは?民泊に旅館業法の許可が必要かどうかの「判断基準」を御確認ください。
宿坊の新設は「簡易宿所」許可を取得
宿坊を新たに開業する場合には、旅館法上の「簡易宿所」としての営業許可を取得することとなります。簡易宿所は、ホテルや旅館に比べて構造設備基準が緩やかなため、寺社でも対応することが可能でが、歴史の古い寺社では要件をクリアすることが困難なケースもあります。保健所と綿密な協議を重ねながら手続きをすすめることが必要です。
当サイトでは、旅館業法で規定されている「ホテル」「旅館」「簡易宿所」の区別について詳しく解説しています。是非ご覧ください。
宿坊が注目を集めている
宿坊ファンドも登場
弊所へも、多くの仏教寺院や神社から問い合わせを頂いています。そのような状況の中、本日の日経新聞で「宿坊ファンド」についての記事が掲載されていました。
お寺や神社の宿泊施設である宿坊に投資するファンドが登場した。ジャスダック上場で、不動産ファンドを組成する燦キャピタルマネージメントが全国寺社観光協会と組み、不動産投資に関心のある富裕層や機関投資家から集めた資金で宿坊を建設・運営する仕組みを立ち上げた。
2016/8/19 日本経済新聞
寺社は敷地が広く、宿坊を新設するスペースが比較的容易に確保できるケースが多いです。一方で、寺社は古い建物が多いため消防法の対応にコストがかかる場合があります。
一般的な簡易宿所の営業許可申請よりは手間がかかる可能性が高いので、スケジュールには余裕を持って取り組まれることをお勧めします。
宿坊のメリット
訪日観光客の滞在地域は一部の観光地へ集中しています。そこで、宿坊を中心とした体験型ツーリズムにより地域滞在型の観光を推進することで、外国人観光客を地方へ誘致することが可能です。「日本の心」や「文化」を体験できる寺社での滞在により、外国人観光客の観光需要を地方へ分散させることが可能です。
弊所では、全国寺社観光協会の宿坊に関する旅館業許可取得を支援しています。
農家民宿の枠組みも活用できる
地方の寺社で宿坊を開設する場合には、旅館業法上の「簡易宿所」のうち、さらに特例的な「農家民宿」の枠組みで実施することも可能です。
農家民宿は、建築基準法・消防法をはじめ様々な法規制について適用除外や例外措置が認められているため、お勧めです。
宿坊の許可手続きは、弊所にご相談ください。