【民泊新法】2017年通常国会に提出の民泊新法法案(住宅宿泊事業法)の概要


2017年通常国会で民泊新法を提出

2017年3月10日に「住宅宿泊事業法案」が閣議決定されました。「住宅宿泊事業法」は、訪日外国人旅行者が急増する中、多様化する宿泊ニーズに対応して普及が進む民泊サービスについて、その健全な普及を図るため、事業を実施する場合の一定のルールを定めたものです。

これは、世間では「民泊新法」と呼ばれている法案です。ここ数年、airbnbを始めとしたインターネットプラットフォームを活用した民泊サービスが世界各国で展開されており、我が国でも急速に普及しています。一方、民泊サービスに起因した近隣トラブルも少なからず発生しており社会問題となっています。

このため、民泊サービスの提供に関して一定のルールを定め、健全な民泊サービスの普及を図ることが急務となっていました。

民泊新法(住宅宿泊事業法)法案提出の背景

  • ここ数年、民泊サービス(住宅を活用して宿泊サービスを提供するもの)が世界各国で展開されており、我が国でも急速に普及。
  • 急増する訪日外国人観光客のニーズや大都市部での宿泊需給の逼迫状況等に対応するため、民泊サービスの活用を図ることが重要。
  • 民泊サービスの活用に当たっては、公衆衛生の確保や地域住民等とのトラブル防止に留意したルールづくり、無許可で旅館業を営む違法民泊への対応が急務。

※「住宅宿泊事業法」の法案文を入手したので詳細解説を追記しました(2017年2月22日)。

※「住宅宿泊事業法」が閣議決定されたので詳細を追記ました(2017年3月10日)。

民泊新法については、観光庁と厚生労働省による検討会において議論が進められ、2016年の6月には規制改革実施計画が閣議決定されました。

民泊新法法案の内容枠組みが判明ー民泊の規制改革実施計画が閣議決定

民泊新法の概要

民泊新法では、ホスト規制と同時に仲介サイト(airbnbなど)への規制が新設される見込みです。さらに、日経新聞の報道によると観光庁は騒音などの苦情や開設手続きなどの相談を一括して受け付ける専用窓口を設ける方針のようです。

(1) 住宅宿泊事業に係る届出制度の創設

[1] 住宅宿泊事業※1を営もうとする場合、都道府県知事※2への届出が必要
[2] 年間提供日数の上限は180日
[3] 地域の実情を反映する仕組み(条例による住宅宿泊事業の実施の制限)を導入
[4] 住宅宿泊事業の適正な遂行のための措置(宿泊者の衛生の確保の措置等)を義務付け
[5] 家主不在型の住宅宿泊事業者に対し、住宅宿泊管理業者に住宅の管理を委託することを義務付け
※1 住宅に人を180日を超えない範囲で宿泊させる事業
※2 住宅宿泊事業の事務処理を希望する保健所設置市又は特別区においてはその長

(2) 住宅宿泊管理業に係る登録制度の創設

[1] 住宅宿泊管理業※3を営もうとする場合、国土交通大臣の登録が必要
[2] 住宅宿泊管理業の適正な遂行のための措置(住宅宿泊事業者への契約内容の説明等)と(1)[4]の措置の代行を義務付け
※3 家主不在型の住宅宿泊事業に係る住宅の管理を受託する事業

(3) 住宅宿泊仲介業に係る登録制度の創設

[1] 住宅宿泊仲介業※4を営もうとする場合、観光庁長官の登録が必
[2] 住宅宿泊仲介業の適正な遂行のための措置(宿泊者への契約内容の説明等)を義務付け
※4 宿泊者と住宅宿泊事業者との間の宿泊契約の締結の仲介をする事業

観光庁資料より

以下に、規制内容の概要を解説します。

「住宅」の定義

住宅宿泊事業法における「住宅」とは、以下の2つの要件を満たすものをいいます。

  1. 当該家屋内に台所、浴室、便所、洗面設備その他の当該家屋を生活の本拠として使用するために必要なものとして政令で定める設備が設けられていること。
  2. 現に人の生活の本拠として使用されている家屋、従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋であって、人の住居の用に供されていると認められるものとして政令で定めるものに該当すること。

ホストに対する規制

住宅宿泊事業を営むもの(ホスト)は、都道府県知事又は保健所設置市等に住宅宿泊事業を営む旨の届出をしなければなりません。

また、住宅宿泊事業者は、届出住宅について、非常用照明器具の設置避難経路の表示その他の火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置であって政令で定めるものを講じる必要があります。

さらに、外国人観光旅客である宿泊者に対し、届出住宅の設備の使用方法に関する外国語を用いた案内、移動のための交通手段に関する外国語を用いた情報提供その他の外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保を図るために必要な措置であって政令で定めるものを講じなければなりません。宿泊者名簿の備え付けも必須です。

ホストに対する規制は、民泊の形態を「家主居住型(ホームステイ型)」と「家主不在型(ホスト不在型)」に区別した上で、住宅提供者、管理者、仲介事業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保しつつ、行政が、住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築するとしています。

ホームステイ型

「家主居住型(ホームステイ型)」の民泊とは、住宅提供者が、住宅内に居住しながら(原則として住民票があること)、当該住宅の一部を利用者に利用させるものをいいます。この「家主住居型」では、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能です。そこで、住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するに当たり都道府県知事又は保健所設置市等への届出を行うこととします。

ホスト不在型

一方で、 「家主不在型(ホスト不在型)」民泊については、家主居住型に比べ、騒音、ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確になります。そこで、「家主不在型」民泊については、届出を行うだけでなく、住宅提供者が「住宅宿泊管理業者」に管理を委託することを必須とし、適正な管理や安全面・衛生面を確保するとしています。

なお、住宅宿泊管理事業者への委託が必須となる住宅宿泊事業は届出住宅に人を宿泊させる間にホストが不在となるものなので、出張やバカンスによる住宅提供者の不在期間中の住宅の貸出しも家主不在型と位置付けられます。ただし、住宅宿泊事業者が事故の生活の本拠として使用する住宅と届出住宅との距離その他の事情を勘案し、住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託しなくてもその適切な実施に支障を生ずるおそれがない場合として政令で定められたケースでは住宅宿泊管理業者への委託は不要となります。この例外規定の具体的内容に注目する必要があります。

「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書を基に作成

住宅宿泊管理業者の新設

住宅宿泊管理業者とは?

ホスト不在型民泊に関して、報酬を得て次の業務を行う事業者を「住宅宿泊管理業者」と規定しています。

  1. 宿泊者の衛生の確保
  2. 宿泊者の安全の確保
  3. 外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保
  4. 宿泊者名簿の備付け
  5. 周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明
  6. 苦情の処理
  7. 届出住宅の維持保全に関する業務

住宅宿泊管理業を営なもうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。これは民泊新法(住宅宿泊事業法)で新たに設けられた業務類型です。登録免許税は1件9万円です。

現在は、民泊代行業者が何ら登録を行うこと無く民泊代行(民泊管理業)を実施していますが、民泊新法(住宅宿泊事業法)が施行された後は国土交通大臣の登録を受けなければ住宅宿泊管理業を実施できません

管理受託契約の締結前の書面交付

住宅宿泊管理業者は、管理委託契約を締結する前に委託者に対して、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって政令に定めるものについて、書面を交付して説明しなければなりません。

この書面交付は電磁的方法による提供でも可能です。すなわち、PDFによる交付も認められます。

管理受託契約の締結時の書面交付

住宅宿泊管理業者は、管理受託契約を締結したときは、委託者に対して次の事項を記載した書面を交付しなければなりません。

  1. 住宅宿泊管理業務の対象となる届出住宅
  2. 住宅宿泊管理業務の実施方法
  3. 契約期間に関する事項
  4. 報酬に関する事項
  5. 契約の更新又は解除に関する定めがあるときは、その内容
  6. その他政令で定める事項

この書面交付は電磁的方法による提供でも可能です。すなわち、PDFによる交付も認められます。

住宅宿泊管理業務の再委託は禁止

住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業者から委託された住宅宿泊管理業務の全部を他の者に対し再委託してはなりません。

現在の民泊代行業者の中には、受託した民泊運営業務を下請け業者に丸投げしている業者も多いようです。しかし、民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行後はそのような業務全部の再委託は禁止されます。

住宅宿泊仲介業(民泊仲介サイト)に対する規制

上記の「家主住居型(ホームステイ型)」と「家主不在型(ホスト不在型)」とを問わず民泊に係る住宅宿泊仲介業者(airbnbをはじめとした仲介サイト等)は観光庁長官への登録が義務付けられます。仲介事業者には、消費者の取引の安全を図るため、取引条件の説明義務や新たな枠組みに基づく民泊であることをサイト上に表示する義務等が課されます。

また、住宅宿泊仲介業者は、宿泊者に対し、法令に違反する行為を行うことをあっせんしたり法令に違反するサービスの提供を受けることをあっせんすることは禁止されます。すなわち、airbnbが違法な「ヤミ民泊」をあっせんすることは、住宅宿泊事業法施行後には不可能となります。

「民泊サービス」のあり方に関する検討会最終報告書を基に作成

「民泊」苦情窓口の新設

民泊に関する官公署は多岐に渡るため、民泊に関する相談や苦情を受け付ける専用窓口を観光庁が新設する見通しです。日経新聞の報道によると、観光庁は2017年度予算案で専用窓口の設置や啓発活動に充てる費用として7千万円を計上したとのことです。

空き家などに旅行者を有料で泊める「民泊」について、観光庁は騒音などの苦情や開設手続きなどの相談を一括して受け付ける専用窓口を設ける方針を固めた。民泊の基本的なルールを定めた新法の施行時期をめどに開設する。民泊を巡っては所轄する部署が多岐にわたるため、相談先が分かりづらく、窓口を一元化してトラブル防止や民泊の適正化につなげる。

日経新聞2017年1月10日

「民泊新法」民泊はビジネスでは使えない

上記のように届出だけで実施ができるため、「民泊新法」による「民泊」(以下、「新法民泊」といいます。)は参入障壁がとても低くなっています。しかしながら、この「新法民泊」をビジネスで活用するのは困難といえます。その理由は、「一定の要件」です。

「新法民泊」は、住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものです。「一定の要件」を超えて実施されるものは、「新法民泊」の対象外であり、旅館業法に基づく営業許可が必要です。

すなわち、年間180日を超えて民泊を実施する場合には、現在と同様に旅館業許可を得るか特区民泊の届出をする必要があります。

「一定の要件」は絶対に180日以下(半年未満)

「一定の要件」は、既存の旅館やホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のある日数である必要があります。

「一定の要件」としては、「住宅」として扱い得るようなものとすることを考慮すると、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定すこととなります。1年の半分以上の期間を他人の宿泊サービスに提供するものは「住宅」とは言えないからです。上述したように、「新法民泊」を「住宅を活用した宿泊サービスの提供」と位置付けるのであれば、日数制限は必然的に180日以下となります。

民泊業界は180日規制に反対しているようですが、その反対には合理的理由がありません。代表的な反対理由は「180日が上限だとビジネスとして民泊に参入できない」というものです。しかしながら、上述の通り、「新法民泊」はビジネスでの利用を想定していません。あくまでも、住宅を活用した宿泊サービスとしての位置づけであり、「営業」ではないからです。

弊所が入手した法案文によれば、政令で定めるところにより算定した日数が「1年間で180日を超えないもの」とされています。

他人が宿泊する日数が多いと「旅館業」

「住宅」として扱うのだから住居専用地域でも実施可能

日数制限があるからと言って、デメリットばかりではありません。旅館業が実施不可能な地域でも開業できる余地があるからです。

すなわち、「住宅」として扱い得るような「一定の要件」が設定されることを前提に、住居専用地域でも実施可能とされる見込みです。住居専用地域では旅館業は開業できません。したがって、旅館業の一類型である「簡易宿所」や「旅館」は開業できないのです。また、特区民泊も開業できないケースが多くなっています。「住宅」を活用した宿泊サービスであれば、「住宅」が建設可能な地域である住居専用地域で実施可能になる可能性が高いです。

ただし、地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能です(いわゆる「上乗せ条例」による規制)。この点については、京都市が強く要望しています。全国各地の自治体がどのような対応をするのか注目されます。

法律が認めても条例が許さない(法律より厳しい条例規制【上乗せ条例】の問題)

日数制限の監視は代行業者や仲介サイトが担当

「一定の要件」が遵守されているかのチェックのため、民泊運営代行業者(新法で規定される「管理者」)に報告などを求めるとされています。

また、無届の家主居住型民泊や登録管理者不在の家主不在型民泊などと並んで「一定の要件」に違反した民泊も「違法な民泊」に該当するため、サイトからの削除命令、違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等の対象となります。これらの処分・罰則を避けるために、airbnbをはじめとした民泊仲介サイトは日数制限を超過した違法民泊を掲載しないような監視システムを構築する必要があります。

日数制限のカウント方法は?

日数制限のカウント方法は、宿泊者を募集した日数をもって計算するのか、もしくは実際に他人が宿泊した日数をもって計算するのかについて、「日数制限」の意義が問題となります。現時点では、この点についての解釈は確定していません。

私見では実際の宿泊日数にすべきだと考えます。住居性が失われる根拠は他人が宿泊することだからです。実際に他人が宿泊しなければ(空家であれば)住居性は喪失しません。「住宅として」の新サービスだから日数制限をするという制度趣旨を鑑みると、実際に他人が宿泊する日数を制限し、「住宅として」の性質を担保するべきです。

民泊新法を待っても無意味

前述の通り、民泊新法による民泊であある「新法民泊」では年間180日以下の日数制限が付されます。したがって、ビジネスとして民泊を展開するのであれば従前の「簡易宿所型民泊」か「特区民泊」の枠組みを利用する必要があります。

この点、「民泊を取り巻く状況は過渡的であり、民泊新法が成立するまで様子を見る」というスタンスの事業者が多くいます。しかし、新法民泊がビジネスに不向きであることは決定的であり、これを待つ実益はありません。一方で、合法的な民泊として用意された枠組みは現在でも利用可能です。

よって、合法的な民泊を事業として開始しようと考えている事業者は、民泊新法の成立を待たずに簡易宿所型民泊か特区民泊ですぐに事業を開始すべきです。

なお、民泊新法と同時に旅館業法の改正案も提出予定であり、旅館や簡易宿所の構造設備基準が緩和される予定です。構造設備基準の緩和を待つという限度では、法改正を待つ実益があります。

旅館業法改正案についてはこちらの記事を御覧ください。

特定行政書士 戸川大冊
small早稲田大学政治経済学部卒/立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)
民泊許可手続の第一人者。日本全国の民泊セミナーで登壇し累計850人以上が受講。政治法務の専門家行政書士として日本全国の政治家にクライアントが多数。 民泊を推進する日本全国の自治体政治家や国会議員にネットワークを持つ、日本で唯一の行政書士。
NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に取り上げられている。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、東京新聞、週刊誌などでも掲載多数。

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