【旅館業法改正】民泊新法と同時に審議予定の旅館業法改正法案の内容が判明


第7回規制改革推進会議で旅館業規制見直し要求がまとまる

2016年12月6日に実施された第7回規制改革推進会議において、旅館業規制の見直しに関する意見書が取りまとめられました。本記事では、首相官邸から発信された資料を基に旅館業規制の見直し要求内容について解説したいと思います。

ICT活用等で規制撤廃を求める

旅館業法に基づく規制は、施設の構造設備の基準が中心ですが、ICTの活用等で目的を達成し得るものや、あらかじめ顧客に対して構造設備の状況を明示することで足りると考えられるものが多い指摘されています。時代に即応しない、過剰な規制が残っているという問題意識です。

また、旅館業法の目的に照らして必要性が明確ではない規制も少なくないとも指摘されています。現在、次期通常国会への提出に向けて、「民泊法案(民泊新法)」とともに、旅館業法改正法案の検討が行われています。そこで、旅館業法改正の際には構造設備の基準の規制全般についてゼロベースで見直し、最適かつ最小の規制にする必要があると主張しています。

規制改革会議の意見書では、旅館業規制について「撤廃すべき規制」と「公衆衛生等の観点から根拠を明確に説明し得る必要最小限のものとすべき規制」に分けて論じています。

以下に、それぞれの規制について具体的に解説します。

撤廃すべき規制

客室の最低数

ホテルが10室以上、旅館が5室以上と政令で規定がされているものです。この最低客室数規定を撤廃すべきとしています。この規制の趣旨は経営の安定のためという回答が厚労省からありましたが、少なくとも経営の安定のために政府が規制をすることは必要ないと判断しています。

寝具の種類

政令で、洋室について洋式の寝具と規定され、さらに和室につきましては衛生等管理要領の通知で和式の寝具と書かれています。厚生労働省からは廃止の方向で検討という説明がありましたが、規制改革会議でも撤廃すべきと判断しています。寝具の種類について予め情報提供をすれば、利用者の立場からするとそれで足りると判断したものです。

客室の境の種類

政令で、洋室について客室と他の客室、客室と廊下等の境は壁造りであることと規定されています。さらに旅館業における衛生等管理要領(平成 12年12月5日厚生省生活衛生局長通知)では和室について、同様に境については壁、板戸、ふすま等による区画と規定されています。これも厚生労働省からは廃止の方向と表明されていますが、規制改革会議でも撤廃すべきと判断しました。

採光・照明設備の具体的要件

政令では「適当な換気、採光、照明、防湿及び排水の設備を有すること」と規定され、具体的なことは政令には記載がありません。

この点については、 旅館業における衛生等管理要領(平成12年12月5日厚生省生活衛生局長通知)の33番(1)で規定されています。同規定では、「客室は、窓等により自然光線が十分に採光できる構造であり、窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積は、おおむね面積の8分の 1以上を有すること(5分の1以上が望ましいこと。)とされています。また、照明設備については同管理要領に表があり、場所ごとの必要な照度が定められています。

このような通知による採光・照明設備の具体的要件を撤廃すべきとしました。

便所の具体的要件

政令でホテルについては、水洗式で座便式のものという具体的な規定があります。一方、旅館については「適当な数」ということで、具体的なことは政令上は書かれていません。

旅館業における衛生等管理要領(平成12年12月5日厚生省生活衛生局長通知)では便所の数に関する表があり、収容定員に応じた大便器・小便器ごとの数なども定められています。

規制改革会議では、この通知における便所の数に関する具体的な要件については撤廃すべきと考えています。

公衆衛生等の観点から根拠を明確に説明し得る必要最小限のものとすべき規制

「必要最小限」の規制とは、公衆衛生上不可欠という根拠が示されなくてはいけないとされています。根拠とは、規制改革会議の委員も納得するものであり、宿泊者の自己責任も超えた部分であって、必要な規制だと納得し得る最小限のものとしています。

客室の最低床面積

政令において洋室が1室9㎡以上、和室については7㎡以上と規定されています。この客室床面積については、今年4月に政令改正が行われ、簡易宿所の要件が1人当たり3.3㎡に緩和されてました。一方で、ホテル・旅館については、簡易宿所の基準と比べて必要な面積を確保したいという主張が厚生労働省からありました。

そのような点も踏まえ、明確に説明し得る必要最小限のものとすべきと規制改革会議では判断しています。

入浴設備の具体的要件

政令では、ホテルについては、洋式浴室又はシャワー室という具体的な規定があります。一方で、旅館については「適当な規模」とされており、具体的な要件は記載されていません。

この点については、旅館業における衛生等管理要領(平成12年12月5日厚生省生活衛生局長通知)の15(3)にあり、かなり細かく規定されています。具体的には、入浴設備の床面、浴槽底面のおおむね100分の1.5以上の勾配という設備要件や、オーバーフロー回収槽というあふれたお湯を回収する槽について、地下埋設を避け、内部の清掃が容易に行える位置又は構造であり、レジオネラ属菌が繁殖しないように消毒できる設備が設けられていることといった衛生上の具体的な要件も規定されています。

このような点は撤廃することについては議論があり、明確に説明し得る必要最小限のものとすべきと規制改革会議では判断しました。

玄関帳場の規制

撤廃すべき要件

下記に挙げるような、「受付台の長さが 1.8m以上」等の要件は撤廃すべき

旅館業における衛生等管理要領(平成12年12月5日厚生省生活衛生局長通知)

施設設備
第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基準
(玄関帳場又はフロント)
11 善良風俗の保持上、宿泊しようとする者との面接に適し、次の要件を満たす構造設備の玄関帳場又はフロントを有すること。
(1) 玄関帳場又はフロントは、玄関から容易に見えるよう宿泊者が通過する場所に位置し、囲い等により宿泊者の出入りを容易に見ることができない構造設備でないこと。
(2) 玄関帳場又はフロントは、受付台の長さが 1.8m以上を有するなど事務をとるのに適した広さを有し、相対する宿泊者と従事者が直接面接できる構造であること。
(3) 玄関帳場又はフロントの内側にあって、受付台から適当な距離を隔てて客室のカギを保管する設備を有すること。
(4) 玄関帳場又はフロントの受付台の前の場所は、収容定員に応じて十分な広さを有し、1.6m以内には、植木、カーテン等宿泊事務に支障となる物品を備え付けてはならないこと。
(5) 旅館営業においては、玄関帳場に類する設備として従業者が常時待機し、来客の都度、玄関に出て客に応対する構造の部屋を玄関に付設することができること。
(6) モーテル等特定の用途を有する施設においては、玄関帳場又はフロントとして、施設への入口、又は宿泊しようとする者が当該施設を利用しようとするときに必ず通過する通路に面して、その者との面接に適する規模と構造を有する設備(例えば管理棟)を設けることができること。

ICTの活用等により適用除外とすべき

ICTの活用等によりセキュリティ面や本人確認の機能が代替できる場合は玄関帳場の規定を適用除外とすべき

参考資料

旅館業規制の見直しに関する意見

平成28年12月6日
規制改革推進会議

1.改革の必要性
昭和 23 年に「公衆衛生及び国民生活の向上に寄与すること」を目的として制定された旅館業法は、時代に応じた変更が不十分なまま今日に至っている。過剰な規制はホテル・旅館事業者の創意工夫を阻むものであり、外国人観光客を含む宿泊需要の拡大や宿泊ニーズの多様化に十分対応できていないという指摘がある。
同法に基づく規制は、施設の構造設備の基準が中心だが、こと細かな規制によらずとも、ICTの活用等で目的を達成し得るものや、あらかじめ顧客に対して構造設備の状況を明示することで足りると考えられるものが多い。また、同法の目的に照らして必要性が明確ではない規制も少なくない。
現在、次期通常国会への提出に向けて、「民泊法案」とともに、旅館業法改正法案の検討が行われているが、その際、構造設備の基準の規制全般についてゼロベースで見直し、最適かつ最小の規制にする必要がある。

2.改革の方策
(1)旅館業に係る構造設備の基準の規制全般について、撤廃することができないかゼロベースで見直すべきである。少なくとも、下記A.の規制については撤廃し、下記B.の規制については公衆衛生等の観点から根拠を明確に説明し得る必要最小限のものとすべきである。

A.

① 客室の最低数
② 寝具の種類
③ 客室の境の種類
④ 採光・照明設備の具体的要件
⑤ 便所の具体的要件

B.

① 客室の最低床面積
② 入浴設備の具体的要件

(2)構造設備の基準のうち玄関帳場の規制については、「受付台の長さが 1.8m以上」等の要件は撤廃するとともに、ICTの活用等によりセキュリティ面や本人確認の機能が代替できる場合は適用除外とすべきである。
(3)今後とも、2020 年東京オリンピック・パラリンピックの開催に向け、旅館業に関する規制について不断の改革を進めるべきである。

以 上

 

特定行政書士 戸川大冊
small早稲田大学政治経済学部卒/立教大学大学院法務研究科修了(法務博士)
民泊許可手続の第一人者。日本全国の民泊セミナーで登壇し累計850人以上が受講。政治法務の専門家行政書士として日本全国の政治家にクライアントが多数。 民泊を推進する日本全国の自治体政治家や国会議員にネットワークを持つ、日本で唯一の行政書士。
NHK「おはよう日本」、テレビ東京「ワールド・ビジネス・サテライト」、TBS「ニュース23」など多数のテレビ番組に取り上げられている。朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、産経新聞、東京新聞、週刊誌などでも掲載多数。

コメントは受け付けていません。